”相合傘“
幼馴染だったアイツ
いつも一緒だったから
隣にいるのが当たり前で
中学でもずっと変わらないと思ってた
いつからか、私の背よりも高くなって
腕相撲も簡単に負けるようになって
アイツはどんどん男になった
雨が降るといつも傘を忘れて
私の所にやってくる
私は毎回仕方なく傘に入れて一緒に帰る
当たり前の日常
ある雨の日
アイツは私の所に来なかった
何気なく3階の窓から外を見ると
アイツが誰かの相合傘で帰ってた
その時初めて気が付いた
当たり前だと思ってたのは私だけ
今頃気付くなんてバカみたい
私の傘は無地の水色
“お前らしいよな!”って言ったよね
”空みたいで良いよな!“って言ったよね
だから明日聞いてみよう
“オマエが好きな色は水色でしょ?”って
”1年前“
貴方とさよならしたのは
ちょうど1年前のこの日
雨が降る中で
私達は待ち合わせをした
別れる為の待ち合わせ
あれから1年
今日は雲ひとつない青空で
外出日和だが
私は仕事に向かう
嫌いじゃなかったけど
貴方との約束がだんだんと
辛くなって
私から別れを選んだあの日
いつになったら貴方を忘れるだろう
こんな青空の日でも
まだ貴方の事を思い出してしまう
どうせ思い出すなら雨でも良かった
今日の天気予報は晴れなのに
なぜか傘を持っていた
あの時さしていた傘
私はカフェのしまい忘れた傘立てに
その花柄の傘を入れて
私は振り向く事なく
前に進んだ
”好きな本“
10代の頃はサスペンスものが好きで
お小遣いを貯めては単行本を買い
まるで自分が探偵にでもなったかの
ように、夢中になって推理していた
20代になり私は次第に恋愛小説に
はまっていった
まるで自分が主人公のヒロインに
なったかのように
非現実的な恋愛に憧れた
30代になり私はエッセイにはまった
いろんな分野の人達の体験や
思いに興味が湧き
笑ったり、泣いたりしながら読んだ
40代には癒し系の本を
手に取るようになっていた
自分がどう生きるべきか
自分がどうしたいのかが
わからなくなってつまずいた時に
誰かに
“大丈夫!あなたはあなたのままで良い”
と言ってほしいかのように
読み続けていた
そして50歳になって
私はどんな本を手に取るのだろう?
今まで私に寄り添ってきてくれた
大切な私の大好きな本の
背表紙を思い出しながら
また新しい本に出会う為に
今日も本屋さんに立ち寄ってみよう
“街”
この街に住んで何年になるだろう
逃げるようにこの街にやってきた
山奥の小さな村で生まれ
小さい時は何不住なく生活をして
いつからか、私は不住を感じるようになり
山奥の小さな村を
いつしか出る事しか考えていなかった
そして学校入学を期に別の町に住んだ
ただその時は、まだ人の優しさが
どれだけありがたい事かが
わからない馬鹿者だった
私は就職を期にこの街にやってきた
生活の不便はないが
隣の住民も知らない
他人のプライベートに関わらないこの街
この冷たい大きな街で
果たして自分の事を
知ってくれている人は
何人いるんだろう
自分を気にかけてくれる人は
いるのだろうか?
やっと気付いた!
どれだけ人の優しさがありがたいか
どれだけ人の温もりが恋しいか
忙しいだけのこの街から
あの温かな村に
いつか帰れるように
心の準備を整えよう!
“朝日の温もり”
ウグイスの鳴き声で目が覚めた
窓から差し込む朝日が
眩しく感じる
いつもと変わらない日常を
毎日ゆっくり歩いて行く
昔は平凡な日常が嫌で
無理をしながら頑張って
行きたくもない食事に付き合って
笑えない会話で笑って
毎日駆け足で過ごしていた
いつからか、疲れ切って
走れなくなった私は脚を止めた
走る事をやめてみた
そしたら、気付いた事がある
いつもの変わらない日常が
どれだけ幸せだったのか
ゆっくり歩いて前に進む事が
どれだけ楽しい事かを
だから、私はゆっくり歩いていく
朝日の温もりを感じながら
きちんと周りを見て
今日もゆっくり前に進む