『意味がないこと』
何に意味があって
何に意味がないのか
誰がそんなことを決めるのだろう?
そんなことを決めることに
意味はあるのだろうか?
意味のないことをする必要はない?
意味があることだけやればいい?
その意味の定義はどう決める?
目の前にあることに対してか?
目の前だけが全てなのだろうか?
すべてはどこかに繋がっている
意味の無いものが
巡り巡ってどこかに繋がる
繋がったら意味が生まれる?
すでに切り捨てたはずなのに?
意味がないことなんて無いのかも知れない
でも、こんなことを考えることに意味はある?
すべての思考は堂々巡り
同じところをぐーるぐる
何にも繋がらぬ円を描く
そう、意味がないこと
本当に?
『あなたとわたし』
あなたとわたし、何が違うのだろう
同じ人間のはずなのに
あなたに出来て、わたしに出来ないことがある
わたしに出来て、あなたに出来ないこともある
あなたにあって、わたしに無い物がある
わたしにあって、あなたに無い物もある
全てのことはお互い様
わたしだけが大変なわけでも
あなただけが大変なわけでもない
でも、人はつい「わたし」のことばかり考えがちになってしまう
「わたし」が「わたし」のことばかりを考えたなら
「あなた」も「あなた」のことばかりを考えるだろう
それはきっと悲しいこと
わたしがあなたを
あなたがわたしを
お互いに考えられたなら
そこにはきっと穏やかな「あなたとわたし」が待っている
だから、僕は「あなた」のことを考えたい
『柔らかい雨』
あの日と変わらない曇り空
いつかは雨になるのかな
あの日も雨になったっけ
雨は冷たく、痛かった
いつもと同じ雨なのに
いつもと違う雨だった
掠れた遠い憧憬は曇り空
しばらくすると雨が降る
小さかった手を引く大きな手
雨はぬるく、優しかった
いつもと同じ雨なのに
いつもと違う雨だった
いくつもの雨を越え
今日もまた雨が降る
小さかった手は大きくなり
ぬるく、優しかった雨は
冷たく、痛い雨になる
手は大きくなったのに
僕の心は泣いていた
いつもと同じ曇り空
もうすぐ雨になるだろう
いつもと同じはずなのに
いつもと同じはずなのに
何故こんなにも柔らかい
小さな手を引く大きな手
柔らかい雨が僕たちを包む
引かれる小さな手と
大きな僕の手を
『一筋の光』
周囲は夜明け前のような、暗くも薄明るく
濃紺に薄い青、薄い白がグラデーションを描いている
ここは、どこかの山の上?
足下は地に足が着いていない感覚だ
それにも関わらず、どこか落ち着く
不思議な心地…
雲間から光が射していた
あの光の元へ行ってみたいと思った
どうやったらたどり着けるのか
路は見えない
それでも、たどり着けると知っているかのような確信がある
それが何故かはわからない
これは、いつ見た景色なのか
気が付いたら心の中にあった
そして、いまでも覚えている
あの光の元へ、自分は行くのだと
雲間から射す一筋の光は、いったいどこに繋がっているのか
僕をどこへと誘っているのか
それはきっと、たどり着けた時にわかるのだろう
『哀愁をそそる』
哀愁をそそる背中
うらぶれたおじさんの背中
孤独な背中
あぁはなりたくない
人はそう言う
哀愁をそそる背中
最初からそうだったわけじゃない背中
人に囲まれていた背中
誰にも若い日々はある
人はそれを忘れてしまう
哀愁をそそる背中
多くのことを見てきた背中
多くの何かを失ってきた背中
それでも懸命に前へと歩んだ証
人に認められずとも
哀愁のそそる背中
僕は、そんな背中になれるだろうか