雨の香り、涙の跡
ささいなことでも妹は泣いた。
お姉ちゃんの私は泣かないようにしてたけど、一度だけ妹と一緒に泣いた事がある。
夜に2人だけの留守番の時、妹が幽霊を見たと言ったのだ。
泣いて怯える妹に最初は見間違いだと怒っていたけど、だんだんと不安になり最後は私も泣き出した。
初めて見た私の泣き顔に驚いて妹が一瞬、泣き止んだことも覚えてる。
その時に抱きしめた、小さく柔らかい体。
お互いに抱きつきあいながら、頭を撫でられた。
お姉ちゃんも怖いのねと、優しい声で妹は言い、雨の匂いと頬にくっきりと涙の跡があった。
もしも君が
小さい頃からどこか心に埋まらないものを感じてた。
まるでパズルのピースが欠けたように。
遊んでいても、食べていても、お風呂に入っていても。
満たされないものを感じてた。
もしも君もそうだったら、
パズルピースが噛み合うように
ピッタリと凸凹がはまる僕らだったら
一生を共に過ごす運命なのかもね
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恋愛書くの難しいというか、むず痒い
ILove
大事な難しい仕事の後はぐったりとしてしまう私に、今日はご褒美を。
お風呂にゆっくり浸かった後はフェイスパックしながらビールを一杯。
リラックスするBGMをかけながらパックの時間だけ頑張った自分を褒める。
私が私を大事に出来る時間。ILove.
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正直、私も欲しい時間です
君と歩いた道
「お父さんしっかりね」
「おう、お前もドレス踏むなよ」
そしてチャペルの扉が開いた。
同じみの結婚行進曲。
参列者に囲まれ厳かな雰囲気に緊張感があるが、長いウェディングロードのおかげで少しずつ慣れていく。
一歩ずつ純白の姿と歩む度に、小さい娘と歩いた公園、家への道、祭りの屋台の思い出が走馬灯の様によみがえる。
涙ぐむ俺に、隣で小さく幸せそうに微笑む。
「まだ泣くのは早いわよ、お父さん」
ささやいて組んでいた腕を解いて娘は、花婿の隣りに並んだ。
ぐっと奥歯を噛んで涙をこらえてチャペルの指定の椅子に座わる。
これからは俺の代わりに隣りをずっとあの男が歩んで行くのだと思うと、また万感の思いが込み上げる。
そして、またその子供へとそうやって続いていくのかと。
……自分達のように。
気がつくと母さんが笑いを噛み殺していた。
「なんだよ」
「だって、貴方。あんなに花婿にらんで」
にらんでるつもりはなかった。涙を耐えたせいでそう見えたらしいが、格好付かないので何も言えなかった。
夢見る少女のように
母親がまた恋をした。
私が知る限り父と別れてから5度目の恋だ。
恋は盲目というが、今度の男は最悪だった。
何があったか言いたくないし、思い出したくもない。
とにかく母も暴力を振るわれたしお金も持ってかれた。
母は泣いた、私を抱きしめて泣いたが、気づいてしまった。
夢見る少女のような瞳に。
あぁ、この人いま自分の不幸に浸ってるだけだなと。
案の定、別れた後も似たような男を選んだ。
私は逃げるようにして友達の家を転々とした。
母は、私を守ることを選ばずに男を選んだのだ。
その夢見る少女のような瞳で。