高嶋のぎ

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6/27/2025, 12:39:56 PM

まだ見ぬ世界へ!


婚約者が死んだ。
事故だった。

最後に喋っていたのは私だった。
楽しく、旅行の話を携帯でしていた。

一緒に行くはずだった、旅行先のキャッチコピー。

『まるで天国のような世界をアナタも体感しませんか!』

ひとりで来た、タイの湖。
辺り一面、蓮の花がけぶるように咲きほこり、朝日に照らされている。
どこまでも、地平線までも続きそうな蓮の花と青い空。

(先に本物の天国に行ってどうするのよ、馬鹿)

静かに頬を濡らしながら決意する。
まだ見ぬ世界を、貴方の分まで体験することを。

世界はまだ感動に満ちていることを、この天国のような景色が教えてくれたから。

6/24/2025, 2:48:01 PM

空はこんなにも


都会の空は狭い。
ビル群にさえぎられ、屋根や電柱、電線で区切られている。

見上げても、切り取られた絵画のように味気ない。
夜空もダークブルーに彩られ、星ひとつ見えやしない。

ある日、ふとたまたま付けたアニメで、登場人物が星空に感動しているシーンがあった。
古代の話しなのか、見上げた星空の美しさに彼らは神を感じていた。

うらやましい。

正直に思った、その素朴な感動すらない人生を生きている身だ。
神なんて、とうに廃れてしまったコンテンツである。

空は、こんなにも感動できるモノなのか。
昔の空とはもう違うのだろう、とため息をついた。

6/24/2025, 4:54:54 AM

子供の頃の夢


とにかく早く大人になりたかった。
私には6歳上の姉がいる。

子供にはわからない難しい話しを両親としては笑い、なんとなく疎外感を感じていた。

身体も大人っぽくてうらやましかった。

私の癖毛ですぐに跳ねる髪の毛じゃない、真っ直ぐな黒髪が美しかった。

子供のころの夢は、とにかく姉と同じに早くなりたかった。
幼い、おさない最初に抱いた夢。

6/23/2025, 4:42:24 AM

どこにも行かないで



 結婚したばかりだった。
両親が勧めた見合い結婚だった。

「赤札がきたよ」

 1ヶ月足らずで、夫になった男が言った。

「おめでとうございます、旦那様」

 戦争だ、誇らなければならない。
わずかに芽生えた愛情なんて、お国の為に尽くすことに比べたら些細なことだ。

「ありがとう」

 その表情をみれなくて私は静かに頭を下げた。

どこにも行かないで、なんて言えやしない時代だった。

6/20/2025, 12:25:32 PM

好き、嫌い


好きで一緒になったのに、嫌いになるくらいなら別れた方がいいのに。
そう思った両親との関係性。

結婚したら今や私も同じ。
知れば、知るほど。
距離感がわからなくなっていくほど。

貴方のことが好きで嫌い。

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