君と歩いた道
「お父さんしっかりね」
「おう、お前もドレス踏むなよ」
そしてチャペルの扉が開いた。
同じみの結婚行進曲。
参列者に囲まれ厳かな雰囲気に緊張感があるが、長いウェディングロードのおかげで少しずつ慣れていく。
一歩ずつ純白の姿と歩む度に、小さい娘と歩いた公園、家への道、祭りの屋台の思い出が走馬灯の様によみがえる。
涙ぐむ俺に、隣で小さく幸せそうに微笑む。
「まだ泣くのは早いわよ、お父さん」
ささやいて組んでいた腕を解いて娘は、花婿の隣りに並んだ。
ぐっと奥歯を噛んで涙をこらえてチャペルの指定の椅子に座わる。
これからは俺の代わりに隣りをずっとあの男が歩んで行くのだと思うと、また万感の思いが込み上げる。
そして、またその子供へとそうやって続いていくのかと。
……自分達のように。
気がつくと母さんが笑いを噛み殺していた。
「なんだよ」
「だって、貴方。あんなに花婿にらんで」
にらんでるつもりはなかった。涙を耐えたせいでそう見えたらしいが、格好付かないので何も言えなかった。
6/8/2025, 3:35:48 PM