今、久しぶりの「もう一つの物語」がはじまりそうなんだ。細かくいうと、二つの物語がはじまりそう。
一つ目は、私が生徒会長に就任するという物語。
二つ目は、かっこいいあの人と恋に落ちる物語。
最近は一つ目の演説準備のせいでずっとこのアプリに貢献できていなかった、寂しかった。
というか、あの人、私に「会える予定が分かったら連絡するからさ、連絡先教えて欲しい」って言ったくせに、ずっと連絡こないし、なに、私は遊びの女ってこと?私だってあんな人のこと好きなわけじゃないし。
ふつうにうそ、まちがえた。本当はあの人からのDMをずっと待ってて、すごく好きで、ずっと頭の中にあの人がいる。神様、そろそろ私に女子高生らしい恋をさせて欲しい。今までの教師に恋をする物語や、同性の友人に恋心を抱いてしまう物語とは全く違う、健全な「もう一つの物語」を招いているこの私のことを。
“行かないで”
口を突いて出た言葉だった。私とせっかく話をしていたのに、少しの沈黙が続くと先生は椅子から立ち上がる。私は先生のことが、好きで、もっとお話がしたかった。優等生の偉い子のままでいたかったから、話すことは全部授業内容に関係することを選んでいた。けれど、口を突いて出た。
「“行かないで”、、戻らないでください。」
「?わかりました、何かございましたか?」
そういう柔らかな言葉遣いが、彼の言葉が大好き
「音読して欲しいです。この前やったところを…」
彼に授業で教えて頂いた私の教科書ページを見せると
「これはもう終わってしまったものでしょう?では、3年生が行う文章を読んで差し上げましょう。」
読んでくださるのが嬉しくて、私は次の言葉を待つ。
「すごい、僕の言葉を沢山拾ってくださっているんですね。メモが多い」
「…ぁ、ぇ、っ、そうですね、どれも勉強になる言葉ばかりで。」
なんとか勉強熱心な生徒ということでこれは丸く収まったが(隠しきれない陰キャ感は否めないが)一歩間違えていればただ彼への愛情が強すぎるおかしな生徒になるところだった。勉強を怠らず努力していると、たまにこういう危機回避ができる。なんでそんなに勉強できるの?と言われた時は毎回、こう思ってしまう私の下心を、いつか殺してしまいたい
“声が枯れるまで”あなたへの愛を語るよって想ったけど、別に声が枯れても文章で愛を語れば良いし、もし文章で愛を語れなくなっても眼差しで彼だけを愛すよ
“始まりはいつも”突然だが、
終わりも同じように突然なものだ。
急に好きになったものは案外、急に飽きたりする。
だが、だんだん好きになったことほど、
飽きるのには随分時間がかかるし、それまでの旅程が美しく、私たちを励ましてくれる。
何が言いたいかと言うと、突然起こるラブストーリーほど短命で、永く大切に想ってきた相手ほど、運命の相手であるということだ。
“すれ違い”も愛おしかった。ちょっと言葉が伝わらないのも、不器用な君の可愛さだと思った。ちょっと頭の悪いところが、言葉の拙いところがかわいかった。
それが積りに積もり、どこか堪忍袋の尾が切れた時悟った。なぜこんなにも“すれ違い”をしているのだろうか?と。もっと的確に物事を話してくれ、もっと簡潔にまとめてくれ、私のいう意味を理解し、それに沿った対応を取ってくれ。いつのまにか、君を好きになった部分が、君を嫌う理由になってしまっていたのだ。
わたしは、君の愛に、胡座をかきすぎたのだろうか。いや、むしろもう、君からの愛なんていらない。そうすればお互いに本当の、しあわせを掴めるのだろう。
このまま“すれ違い”を迎え、さようならをしよう