海老body

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7/5/2024, 9:37:09 PM

それは、火花が散るように瞬いていて。
恋をしたときに似ていた。

右手のカップ酒がゆらりと揺れる。
狭いベランダで、化粧も落とさずスーツも脱がず、星空をツマミに飲んでいても、いつかの叱る者はいない。

ここは星がよく見える。そう言うから、ここを借りた。
私は星の名前がわからないのに。全て同じに見えるのに。
この部屋に私を置いていくのなら、星についてもっと教えてくれれれば良かった。

酒と恨み言をゆっくりと嚥下する。
聞くのは私しかいないから、せめて私が消費してあげないと恨み言達が報われない。

視線を落としたその時、カップ酒のロゴがやけにハッキリ見えて。ふと顔をあげたら、空が異常なほど鮮やかに光っていた。
朝にはまだ早すぎる時間で、そこでけたたましい、周囲の端末の警告音に気付いた。

なんだか終末の予感。
この思いは私が背負っていくには重すぎたから、丁度良い。

6/13/2024, 4:41:13 AM

嫌いは言えるけど、好きは分からない。

っていった巴ちゃん(17)。
自分の嫌いなことはよく口にするけど、好きなもの言わない人って人間としてなんか薄くない?と私が口にした時の返事だった。
部活の先輩が毎度毎度、飽きることなく愚痴ばっか話すものだから、私もちょっと愚痴を吐きたくなった、それだけだった。巴ちゃんが、なんでこのタイミングでそれを言ったのかが分からなかったけど、なんか申し訳なくなって、気まずい雰囲気になったのは今でも覚えている。

じゃあね。

っていった昨日、自殺する前の巴ちゃん(22)。
巴ちゃんは、最後まで自分の好きが分からなかったのかな。嫌いばっかり見えてしまって、世界が敵のように見えたのかもしれない。
私は、あなたの好きにはなれなかった?
生きる理由になれなかったかな?

私達、分かりあえてなかったのかもしれないね。
それでも、そんな巴ちゃんのこと、私は大好きだよ。
またね。


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『玉江 巴』

3/7/2024, 9:37:37 AM

「私達、絆でつながってる?みたいな」
言って自分で恥ずかしくなったのかそっぽを向く君。
でも、耳が真っ赤で何も隠せてないのがかわいい。

つなぐ手から伝わる君の体温。
河川敷。
目の前に広がる夕焼け。

馬鹿みたいだなあ。甘い妄想に浸って。

ピピピピピ……ピピピ…
目覚ましを止める。
あのとき言えなかった続きを、今でも思い出す。


『追悼』

2/27/2024, 11:28:19 AM

平穏な日々だった。
会社では残業続きだったが、信頼できる仲間達と共に夜を過ごし、休日には家でゆっくりと自分の時間を過ごす。
この日々が、ずっと続くと思っていた。
そんな日々が突如として崩れた。

ああ、明日の夕飯は何にしよう。
久しぶりに洋食にしてみようか。

カサッ

………

カサカサッ

もう、やめて……
ゴキブリ……

2/26/2024, 11:29:53 AM

金木犀の香りがした。
振り返ると、髪の綺麗な女性がコートを翻して歩いていて、なんだか私は、恋に落ちたみたいだった。

私は金木犀が好きだ。
だけど、自然の中ではこんなにも可愛らしい甘さを持つのに、百貨店で香る金木犀はなんとも媚びるような甘さで嫌いだ。
常々、人工は自然に勝てないなと思う。

あの髪の綺麗な女性は、金木犀を家に飾っているのかな。
それとも庭に植えているのだろうか。

もしかすると、金木犀の妖精だったのかな。

なんて、いつもの妄想だ。
「私も、金木犀好きよ。あなたみたいで。」

あの彼女の面影をいつも追っている。

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