正直に言うと。
彼が欲しかったんじゃないの。
あなたの「もの」が、欲しかった。
何でも持ってるあなたが羨ましかった。
あなたのキラキラした日常のインスタは、毎日チェックしてた。
始めは「好き」だけだったのに、いつの間にか「あなたになりたい」とさえ思うようになった。
真似をしていくうちに「あなたが持っているもの全て」が欲しくて欲しくてたまらなくなった。
だから、あなたの彼に近づいた。
簡単に手に入りそうになったその時。
「あれ、あなたが大切にしているものは、こんなに安っぽいものなの?」って思ってしまい、一気に冷めた。
私は何者でもないことに気付いた。
明日、自分で選んだ自分の靴を買おうと思う。
題:「ごめんね」
はっと目が覚める。
いつに無くぐっすりと眠り、周りが明るく感じた。
時計を見ると、8時過ぎている。
驚きのあまり全身が総毛立つ。完全なる遅刻だ。
冷や汗を額に滲ませ、上司への言い訳を考える。
こういった時、不思議と動作は緩慢だ。
気持ちを落ち着かせる為、ひとまずコーヒーを片手にTVをつけた。
いつもと違う番組。
…日曜日だった。
題:天獄と地獄
すべすべとした質感。
君は、僕を見つめ続ける。
そして、愛らしくぷるぷると震える。
なんて、あざとい。
それに。とても、とても甘い匂いを漂わせ。
僕を誘惑する。
口づけせずには、いられない。
そう、君はプリン。
題:逃れられない
たまたまゲームの配信系動画を検索していた時に、君を見つけた。
ブラウンアッシュの髪を耳の上でツインテールにし、君の笑顔と共に、ゆさゆさと躍るように揺れる。
初めて見た瞬間から、目が離せなくなった。
ただゲーム実況をしたり、ただご飯を食べながらダラダラと喋る動画も、君のくるくると変わる表情、少しこもった高めの笑い声で、何倍、何十倍にも面白いコンテンツになる。
他の人がしているのと同様に、投げ銭をする。
ネームが呼ばれ、君から「ありがとう!」って言われた時は、嬉しさで全身が痺れる。
君を見つける事が出来て、幸運だと思った。
配信を終えて、ひと息つく。
投げ銭の合計金額を見る。
理想の金額ではなかったけど、まぁこんなもんかな、とツインテールを外した。
「明日はもっと、おねだりしてみよっかな…」
題:理想のあなた
ホワイトベージュの夏用のベレー帽を買った。
自分らしさを纏えた事にとても嬉しくて、値札を切ってもらいそのまま被って帰った。
さよならをして半年。君のSNSをやっと見た。
誰と一緒とは書いて無かったけど、分かれの話をした2日後に旅行に行ってた。
「とっくのとうに、君は吹っ切れてた」
私は、自分に未練を感じてて欲しくて、恋愛系の動画や無料コンテンツの占いを見漁ってたのに。
笑っちゃった。
自分を。
私は今、ホワイトベージュのベレー帽を被る。
君に、褒めてもらう為では無くて。
自分の為のベレー帽を。
今の私は、少し誇らしい。
題:突然の別れ