妻が自宅で待っている。早く帰りたい。
「お若い頃は、何されてたんですか?」
「ずっと会社勤めのサラリーマンだよ。今もそうだ」
「そうですか。お食事はご自身で作られていますか?」
「妻がいるんだから、妻だよ。それはそうと、いつ帰れるんだ?」
「そうですね。身体の事もあるので、ご家族さんと相談してみないと…ですね」
ガラッと、真っ白な部屋のドアが横に開いた。
妻の顔だ。迎えに来てくれて良かった。
妻の名前を呼ぶ。
「何を言ってるのお父さん…お母さんは10年も前に亡くなってるでしょ。お父さんもうすぐ85になるのよ」
目の前の人間は誰だ…
…妻が自宅で待っている。早く帰りたい。
※題「ずっと隣で」
とても、個人的な感情。
作話にもならない。
「想像力」
全てがそれで解決されるように思う。
横柄な人からの仕事依頼。
結局それは依頼主の、それしか知らない「可哀想な人」
理不尽な言葉。
結局それは余裕の無い人の苛立ちの「捌け口」
傷つく言い方。
結局それは、語彙力の無い人の「説明と言葉足らず」
誰もが、もう一歩、踏み込んで想像してみる事が出来たら…
世界はもう少し、平和かもしれない。
※題 「愛と平和」
お金より大事なものは…
はっきり言いましょう、無いです。
作り話でもなんでも無い、本当の内なる言葉。
食べられない、塾のお金が払えない、行きたい学校に行かせられない…
そんな辛い思いは、誰もしたくないでしょう?
私は頑張って働き、行政書士から実業家として道を開いた。事務所も開き、コネクションを作り、それなりの収入を得られ、投資や土地にお金を注ぎ込んだ。
私が亡くなった今。
3人の子どもたちは、遺留分相続で、調停で争っている。
家族を持つことは、手枷足枷と同じ。
僕には耐えられない。責任も持てない。
自由がいいんだ。
だけど性交渉はしたい。
だから、都合の良い女性がいればいいな。
優柔不断だと言われても良い。
苦しい生き方なんかしたってしょうがない。
僕には絆なんて、いらない。
ドクターからICがあった。
胃がん ステージ4 既に腹膜播種も起こしている。
自宅の暗闇の中…家族と一緒に来てください、というドクターの言葉が、頭の中でこだましていた。
子どもの同級生のママが、話しているのが聞こえてきた。
「…そう、うちの夫はいつも、ありがとうって言ってくれるの。ご飯を作っても、掃除しても、子ども達と遊びに行ってきても…」
感嘆の息が漏れ、羨ましいと口々に言うのが聞こえた。
彼女は続ける。
「別に大した事なんてしてないし。いつも通りのことをしているだけなのよ。それでも、毎日、何度も言ってくれる…」
嫉妬の色が、空気に混ざる。それでも空気は透明なまま。彼女は続ける。
「…腹が立つのよ。毎日毎日、ありがとうって。ほんと、もっと言う事無い?って思うでしょ」
空気が一瞬にして真っ白になり、笑い声が廊下に響いた。
題:たまには