お金より大事なものは…
はっきり言いましょう、無いです。
作り話でもなんでも無い、本当の内なる言葉。
食べられない、塾のお金が払えない、行きたい学校に行かせられない…
そんな辛い思いは、誰もしたくないでしょう?
私は頑張って働き、行政書士から実業家として道を開いた。事務所も開き、コネクションを作り、それなりの収入を得られ、投資や土地にお金を注ぎ込んだ。
私が亡くなった今。
3人の子どもたちは、遺留分相続で、調停で争っている。
家族を持つことは、手枷足枷と同じ。
僕には耐えられない。責任も持てない。
自由がいいんだ。
だけど性交渉はしたい。
だから、都合の良い女性がいればいいな。
優柔不断だと言われても良い。
苦しい生き方なんかしたってしょうがない。
僕には絆なんて、いらない。
ドクターからICがあった。
胃がん ステージ4 既に腹膜播種も起こしている。
自宅の暗闇の中…家族と一緒に来てください、というドクターの言葉が、頭の中でこだましていた。
子どもの同級生のママが、話しているのが聞こえてきた。
「…そう、うちの夫はいつも、ありがとうって言ってくれるの。ご飯を作っても、掃除しても、子ども達と遊びに行ってきても…」
感嘆の息が漏れ、羨ましいと口々に言うのが聞こえた。
彼女は続ける。
「別に大した事なんてしてないし。いつも通りのことをしているだけなのよ。それでも、毎日、何度も言ってくれる…」
嫉妬の色が、空気に混ざる。それでも空気は透明なまま。彼女は続ける。
「…腹が立つのよ。毎日毎日、ありがとうって。ほんと、もっと言う事無い?って思うでしょ」
空気が一瞬にして真っ白になり、笑い声が廊下に響いた。
題:たまには
とても、
個人的な、
たったひとつの、希望は。
いつか、必ず。
死がおとずれる、ということ。
「欲望」
ふと足元に転がった、欲望。
知ってる。君を、知らないとは言わせない。
やんちゃなグループの筆頭格が、足を出した。
それに「欲望」は躓いた。
転がる「欲望」…
それでも、きっ!と睨み返す。
理不尽なあいつの仕打ちをやり返す。
「欲望」は、欲望のままに、
あいつの襟元を掴み、押し当てこれでもかと窓の外に押し出した。
「欲望」の欲望は、目の前にいるあいつの泣いている顔など…もう。
見えてはいなかった。
「欲望」は、欲望の、ままに。