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2/23/2024, 5:44:15 AM

ふとんを干してから、取り入れた時の匂い。

あたたかくて、やわらかで。

太陽の匂い、と幼いころより認知していた。

包まれるような、安心する匂い。

大好きだった。

今はもう、嗅ぐ事は出来ないけど。

初めて、心から好きになった人の背中も、同じ匂いがしていた。

2/21/2024, 1:16:56 PM

家族の為。
大袈裟ではなく、本当に家族の為。
資格も取得し、管理職までになった。

だが、ある日辞令が下りた。
地方都市への異動。要は必要がないという事。

娘は高校生になったが、日頃より留守がちだった自分は空気以下の存在。

どうやら妻は、パート先の男と恋仲らしい。

冷蔵庫の中に、自分の好む物は何も無い。

どうだろうか。
「家族の為」と大義名分をかざして、家族から目を背け続けた自分が、今更抗ったところで何になるだろう。

「相手にされてない」

ただ静かに冷蔵庫の音だけが、ブーン…と鳴る。

それは、自分自身が家族に行ってきた事ではないのか。
今更…

「…なんで?早いじゃん」
何も無い冷蔵庫を開けながら、高校生の娘は言った。


妙な間合いの後、暇だから炒飯作るよ、と答えた。
何も無い冷蔵庫を開けながら。

2/20/2024, 7:19:39 AM

当たり前の事だけど、歳を重ねると、沢山の病気にかかり、沢山の出来ない事が増える。

喪失体験も数多くし、思うようにならない身体の上に、心すら思うようにはならない。

「自分がこんなになるなんて、若い時には、想像もしてなかった」
「こんなはずじゃなかった。どうして自分が」

そう感じるのに、年齢制限は無い。

みんな同じ。

積み重なった枯葉は、いつか腐葉土になる。

歳を重ねた分だけ、積み重ねたものがある。

私は言う。

あなた方が生きた年数分、尊敬すると。

2/18/2024, 3:15:09 AM

あなたのお気に入りになりたかった。

後ろから聞こえる、あなたの低くて響く声。

後ろの席に座るあなたに対して、どれだけ声を掛けたかったか。

プリントを配る時、腕まくりしたあなたの腕、手、指、血管を見てはどきどきした。

もちろん、あなたとは違う進路を辿る。

これでさよなら。

卒業式の日。

僕は、遠くから彼を見つめたまま、校門を後にした。

2/14/2024, 5:03:41 PM

冷たい石の獄の隙間から、月を見上げる。
全てを見通せるほど明るい。

「信仰があると、婚姻をしてはならない」

この世界の決まりであるから、仕方ない。

本当にそうだろうか?

この世界の秩序や正義は、本当に正しいだろうか?

人々が当たり前と思っている狭間に弱者がいて、世の中の「当たり前」で見えなくなってないだろうか。

私は、明日絞首刑に処される。

名前はウァレンティヌス。




※バレンタインの語源となった逸話より

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