家族の為。
大袈裟ではなく、本当に家族の為。
資格も取得し、管理職までになった。
だが、ある日辞令が下りた。
地方都市への異動。要は必要がないという事。
娘は高校生になったが、日頃より留守がちだった自分は空気以下の存在。
どうやら妻は、パート先の男と恋仲らしい。
冷蔵庫の中に、自分の好む物は何も無い。
どうだろうか。
「家族の為」と大義名分をかざして、家族から目を背け続けた自分が、今更抗ったところで何になるだろう。
「相手にされてない」
ただ静かに冷蔵庫の音だけが、ブーン…と鳴る。
それは、自分自身が家族に行ってきた事ではないのか。
今更…
「…なんで?早いじゃん」
何も無い冷蔵庫を開けながら、高校生の娘は言った。
妙な間合いの後、暇だから炒飯作るよ、と答えた。
何も無い冷蔵庫を開けながら。
2/21/2024, 1:16:56 PM