「きっと来年もこの桜を一緒に見ようよ、約束。」
一年前の今日、確かに交した約束は──────
「.........全く、あっさり破られちゃったな。」
────────守られることは無かった。
桜の木の前にぽつんと立つ墓の前にしゃがむ。
「...分かってたよ、君がこの約束を果たせない事なんて。」
その約束を交わした時点で君には既に僅かな時間しか残されていなかった。
余命宣告。日に日に衰弱していく身体。それでも必死に生を紡いでいこうと毎日笑顔で振る舞う姿。
「......分かってた、けど」
生きてて欲しかった。もしかしたら来年もまだ君は隣に居てくれるかも、なんて密かに願った僕の淡い期待まで砕いちゃってさ。
何も言わずに居なくなるなんて。この薄情者め。
小さく風が吹いた。桜ははらはらと静かに散ってゆく。まるで誰かさんのように。
少し滲んだ視界を上に向けて空を仰ぐ。
「あーあ、こんなに綺麗な桜を見られないなんて勿体無い!」
どれだけ願っても君はもう居ない。
どれだけ願っても時は戻らない。
仕方ないな、僕がそちらへ行くまでに目一杯堪能しといてあげよう。
「それじゃ一年後、また一緒に見よう。約束。」
#一年後
口を開けば“気になるあの人”の話ばかり。
あの人がね、と笑う彼女の表情はさながら恋する乙女そのものだった。
「はいはい、そんなに好きならさっさと告っちゃえば?」とぶっきらぼうに返すと、途端に顔を真っ赤にして
「べ、別に好きとかじゃなくて...見てるだけで充分というか...!」と分かりやすく慌て始めた。
もはやその反応全てが答えを出している様なものなのに。
なんだか少し気に食わなくなって嫌味をひとつ零す。
「...知ってる?初恋ってさ、叶わないらしいよ。」
今まで恋愛事などさっぱり興味も持たなかった彼女が急に色づき始めたのはいつだったか。
恐らくこれは彼女にとって初恋なのだろう。
「もう、なんでそんなこと言うのっ」と、これまた分かりやすく頬を膨らませた彼女が一生懸命怒る小動物に見えて思わず吹き出す。
初恋は実らない。どうか叶わないで欲しい。
そんな事を考えて胸の奥で小さく痛みを訴えた自分の心に蓋をする。
...あぁ、少なくとも目の前の彼女が好きな私の初恋は叶いそうにないのだから。
#初恋の日
「明日世界が終わるならどうする?」
「安心しろ。間違いなく明日も世界が終わることは無いし、残念ながらお前の嫌いな模試は必ずやってくる。」
「ちぇっ、現実主義者め。」
「んな事考えてねーでさっさと勉強しろ。」
「はぁーい」
「ったく、誰の為に放課後残って勉強見てると思ってんだか…」
それに、もしほんとに明日世界が終わるなら
今お前と過ごせるこの一分一秒を何よりも大切にしたいから。
…なんて口が裂けても言ってやらねぇ。
#もしも世界が終わるなら
小さな君へ
君と出会って、家族みんなの笑顔が増えたよ
ありがとうにゃあ
#君と出逢って