流れ着いたメッセージボトル

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口を開けば“気になるあの人”の話ばかり。
あの人がね、と笑う彼女の表情はさながら恋する乙女そのものだった。

「はいはい、そんなに好きならさっさと告っちゃえば?」とぶっきらぼうに返すと、途端に顔を真っ赤にして
「べ、別に好きとかじゃなくて...見てるだけで充分というか...!」と分かりやすく慌て始めた。
もはやその反応全てが答えを出している様なものなのに。

なんだか少し気に食わなくなって嫌味をひとつ零す。
「...知ってる?初恋ってさ、叶わないらしいよ。」
今まで恋愛事などさっぱり興味も持たなかった彼女が急に色づき始めたのはいつだったか。
恐らくこれは彼女にとって初恋なのだろう。
「もう、なんでそんなこと言うのっ」と、これまた分かりやすく頬を膨らませた彼女が一生懸命怒る小動物に見えて思わず吹き出す。

初恋は実らない。どうか叶わないで欲しい。
そんな事を考えて胸の奥で小さく痛みを訴えた自分の心に蓋をする。

...あぁ、少なくとも目の前の彼女が好きな私の初恋は叶いそうにないのだから。



#初恋の日

5/7/2024, 10:46:56 PM