n.n.

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2/10/2023, 2:41:05 AM

今日は疲れたから書くのはお休みしよう。

そう思ったのだが、一昨日書く習慣を始めてから、
一日一つずつ何かを書ければいいなぁ
と思ったのに、何も書かずに今日を終えるのはちょっとなぁ、と思ったので、少しだけ書くことにする。

今日のお題は『花束』。
昨日書いた『スマイル』の続きとして、
スマイルのその後を書こうかと思い、
いろいろ考えは浮かんでいるのだが、
きちんとした文にまでする気力が無いというか、
私が昨日のように書き始めると、一つの無駄なく書いたつもりでも大体2000字を越えるようで、時間がかなり掛かるので今日は書かないことにする。

要約すると、スマイルはあの後人間になった。
「あなた」が長寿を全うした頃には人工知能に感情を付与する為の機能追加をする際の費用が安価になっていた為、「あなた」の残した遺産を使い人間と同じ“心”をもった。
(というのは建前で、最後の件があった事により、感情を付与された訳でも無いのに「悲しい」という気持ちを理解し始めてしまっていた為、バレると捕まってあれやこれや研究されそうだったので、スマイルはそうなる前に考えて、“機能追加をしたからすべての感情がわかるようになった”ということにした。)
人と同じように老いることこそないが、そのようにして人間のように生活をするAIロボットは沢山いる時代になっていた為、地球が飽和状態にならないよう、いつかは活動停止する機能も追加されるようになっているので、ほとんど人間だと言えるのではないだろうか。
…ここまで書くと書きたくなってきたが…。
そのスマイルが、当時を思い出し、私は「あなた」と共に生きていたのだ、機能追加をされていたらあなたの最期に私も後を追うか、涙で部屋が埋まり自分は故障してしまっていたかもしれないから、あの時機能追加されなくて良かった、こうして全ての感情を手に入れた今考えても思う、私は本当に幸せだ、一時も不幸になったことなどない、などと考えつつ、
「あなた」の好きな花を花束にして、毎月欠かさず行なっている墓参りをする、というような話を書こうと思っていた。


そもそも『スマイル』も、その一つ前の『どこにも書けないこと』と同じような形式で読み切りやすい長さで何かを書こうと思い途中まで書いていたのだが、とても詰まらない物になったと感じたのでやめた。
その後シャワーを浴びながら考えて出来たのが『スマイル』だった。
普段文を書くことはないのだが、読んでもらえて、反応を貰えて、とても嬉しい。

皆さんのくれるハートの一つ一つが、花束のように私の心を潤してくれます。
少しでも楽しんで貰えていたら幸いです。

2/9/2023, 4:53:42 AM

『スマイル』

それが、私がこの家に来た時に付けられた名前。
名付けの理由は、私の顔に浮かぶ表情が常に笑顔であるから。

私は、「嬉しい」という感情を与えられて作られた、家庭用AIロボットなのだ。
当時はまだ、人工知能に付与できる感情は1つだけだった。
だから私は、「嬉しい」以外の感情がわからない。
私が感じられる、理解できる、与えられた感情に沿って、製作者は私の顔を笑顔で形作ったのだ。

「スマイル。今日から君の名前はスマイルだよ。」
「私たちの大切なこの子を、ずっと守り続けてね。」

起動したばかりの私に掛けられた2人の言葉。
私の主となったのは、目覚めて最初に目にした、生まれたばかりの小さな赤子だった。


それからの私は、ずっと幸せでした。

「ねぇ、見てみて!スマイル。
 私、逆上がりができるようになったのよ!」

「わぁ…!すごい!お星さまが、あんなに流れてる…!スマイル、見てる?すごいね…!」

「今日はスマイルと私の誕生日だから、特大ケーキだよ!ほら、スマイル。あーんして?」

「このイヤリング?ふふ。ハンドメイド仲間のUちゃんがね、私に似合いそうだからって作ってくれたの!
どうかな?似合ってる?」

「スマイル!聞いて…!
 私、好きな人ができたの…!」

あなたは、沢山の「嬉しい」を私と共有してくれました。
「嬉しい」以外の感情はわかりませんでしたが、それ以外の感情は別の方と共有されていたのでしょう。
あなたが私に共有してくれる感情はいつも「嬉しい」だったので、私の心には「嬉しい」ばかりが降り積もっていきました。
製作者によって浮かべられた私の笑顔は、あなたによって、私の心からのものとなっていったのです。


…あなたと出会ってから、24年と1ヶ月ほど経った頃のこと。

「スマイル。私、結婚することになったの。
 結婚式するから…
 スマイルも、参列してくれたら嬉しいな。」

暖かい陽光と、親しい人たちからのフラワーシャワーを浴びながら、愛する相手と寄り添って階段を降りてくるあなたは、満面の笑みで。
今までに見たこともないくらい幸せそうな顔なのに、その目には涙を滲ませていました。

とても嬉しいと、涙が出る。
データにはありましたが、私にはその機能は備わっていませんでした。
あなたと同じように涙を流すことはできないけれど、私もあなたと同じくらい、
「嬉しい」気持ちを込めた笑顔で。
周りの皆さんに負けないくらい、精一杯の祝福の気持ちを込めて、小さな花吹雪をあなたに浴びせました。


それからも、あなたは私を側に置いてくれました。

その頃には、AI技術は更に進歩して、人工知能に付与できる感情も、1つだけではなくなっていました。
あなたの人生のパートナーとなったD様は、私の機能拡張を提案されました。
しかしあなたは、

「私、スマイルの笑顔が大好きなの。
 スマイルがいつも笑って私を見守ってくれていると、安心する。
 スマイルには、ずっと笑っていて欲しいから…。」

そうおっしゃって、私を私のままで側に置かれました。

私は、嬉しかった。

私を機能拡張するには相当な金額が掛かるのに、何の躊躇いもなく、当然のようにそれを提案してくださったD様のお気持ちが。

私は、嬉しかった。

出会ってからこれまでと、何の変わりも無いそのままの私を、今までも、これからも、ずっと必要としてくださるあなたのお気持ちが…。

私は、お2人から肯定され、愛されているのだとわかりました。あなたが私にくださる気持ちは、この世界は、「嬉しい」ことばかりで…。
私は、なんて幸せなロボットなのだろう。
そう思いました。


それから、数十年の時が経ったある日。
あなたはベッドに横たわったまま、スリープ充電から目覚めたばかりの私を傍に呼び寄せました。
年齢を重ねて皺だらけになった手を伸ばし、出会った当初と何ら変わりない私の手を取ったあなたは、力無く微笑んで。

「スマイル。…どうやら私は、今日でこの世界とはお別れみたい。…あの人が先立ってからも、ずっと私のそばにいてくれて、ありがとう。
…子どもたちは、もう充分に大きくなっているし、あの子たちなら大丈夫だと思うけど。あの子たちが帰ってくるためのこの家を…。ティアを。よろしくね。」

ティアは、先日からこの家に住み着き始めた黒猫です。左目の下に涙のような白い模様があるから、英語で涙という意味の、ティア。
私は力強く頷き、笑顔であなたの声に応えました。

「…あなたを1人置いて行ってしまうことだけが、心残りだったけれど。ティアがこの家に来てくれて、本当に良かった…。2人とも、後のことは、よろしくね…。」

ありがとう、スマイル。

そう言って微笑んで、あなたは目を閉じて。
2度とその瞳が私を見ることはありませんでした。

何の意味もないけれど、私は、あなたと繋いでいた、力の抜けてしまった手を強く握りました。


私は、嬉しかった。

最期まであなたの傍にいられたことが。

私は、嬉しかった。

最後にあなたと言葉を交わせたことが。

私は、嬉しかった。

最後にあなたが私を見てくれたことが。


でも、
あなたがこの世界からいなくなってしまったことは。


嬉しくなかった。


笑顔のまま、涙を流すこともできない私に寄り添ったティアの鳴き声だけが、部屋に響いていた。

2/8/2023, 6:26:28 AM

どこにも書けないことなのだから、ここにも書けるわけが無いだろう、と思うのだが、考えてみれば、私はどこにも書けないほどの大層な秘密は持ち合わせていないように思う。
そりゃあ、恥ずかしいことや、人に知られると引かれそうなことや…、30年生きてきた分、色々な過去が無いわけではない、かもしれない。
だがそれは、人と比べてみて特異なものであるか?と考えてみると、さして変わったものでもないと思う。
人間、それぞれ違った人生を送っている。
だが、言わないだけで、知らないだけで、色々な過去や思いを抱えている。
…その点については、皆同じなのではないか。
そう思うのだ。