# 時を告げる
おわかれの時を告げる。気づいた頃にはもういなかった。あなたは私の前から消えてしまった。
一人っ子だった私にとってあなたは唯一の姉のような存在だった。空気が読めなくて少々オテンバ。時々ミーハーで、たまに大雑把。悩み事を打ち明ければいっしょに悩んで考えてくれる人。嬉しいことがあれば真っ先にあなたに報告しに行っていたのだけれど、いつもいつも全力で喜んでくれた。反対に悲しい話をすれば、私よりも泣いてくれた。冗談のつもりで「姉のような存在だと思っていますよ」と言ってみたら執拗にお姉ちゃんと呼ばせようとしてきて正直鬱陶しかった。自分の感情のままに天真爛漫に、周りを明るく照らしてくれる人。
大好きだった。
あなたとお付き合いをしていた彼が最期を見届けたみたいだけど、彼は「一人になりたい」とぼそり告げてすぐどこかに行ってしまった。
あなたはもう消えてしまった。祈ることでしかあなたには会えない。
あなたの世界はもう見えない。
# 些細なことでも
些細なことでもいいから、君のことが知りたいと。
そう思えたのは初めてのことで、それは今もなおである。毎日毎日私は君を求めて生きているんでしょうね、と実感している。
朝起きて、君の顔を見るだけで脈の落ち着きがなくなるので「これはいよいよ心臓に悪い」と思いながら簡易的な身支度をするためせっせとベッドから出る。君の寝顔は綺麗で無防備で見目がいいのでずっと見ているとポカポカした浮いた気持ちになってくる。起きているときと寝ているときのギャップが結構ある君なので、ついじぃーっと見てしまう。いけない、これじゃー準備がままならないね。私は君を視界から無くし、身につけている寝巻きに手をかけた。
君のかっこよさによく感銘を受ける。他の女性から声をかけられることがしばしばあるし、本人はスマートにそれらをかわしてくれているけど、相変わらずモテモテだなぁと思ったりする(若干の僻みもこめて)。そんなモテモテさんの君が今さっきまで私の隣でぐうぐう寝てたもんだからなんだか申し訳なく、いや、私が独占してしまいはていいんでしょうかと不思議な気分になってくる。
身支度もあらかた終えたので、そろそろ君を起こさないとと思い、ベッド脇に向かう。君の寝顔に優しくペチペチしながら「起きて起きて、朝ですよ」とモーニングコールをした。君はいつも寝覚めが悪くてたまに理不尽な当たりを食らうのでしつこすぎないように。君がよくわからないお寝ぼけ発言をしながら身を起こしたのを確認し、「私は先に顔洗いにいってます」とひと声かけ、寝室を後にした。
今日はいつもより君のことが好きな日なのかもしれないと思った。