バカみたい
報酬もないのに一生懸命考えてて。
一銭にもならないのに全力で取り組んでて。
ハブられない為にわざと馬鹿なフリして。
この歳にもなってこんなミスするなんて。
俺ばっかり君のこと好きみたいで。
私ばっかりあなたのこと考えてて。
友達もいないのに行きたい場所ばかり夢見てて。
自分だけ真面目に規則を守ってて。
超えちゃいけないラインだと思いながらも拒否ができなくて。
過去にずーっと縛られていて。
辛いと言いながら乗り越えようともしないなんて。
上手く生きるためだって嘘ばかりついていて。
たいした目標もないのに生きていて。
辞めたいと言う割に全てを終わりにする勇気がないとか。
今更「幸せになりたい」とか。
「やり直せたら」なんて不可能なことを考えるとか。
「死にたい」と言うばかりで決心もつかなくて。
たった一言、「生きたい」と言うのが怖いなんて。
──バカみたい。
二人ぼっち
──世界が、嫌いだ。
歩いてきた道のりに禄なものはなかった。強制された感情、押し付けられる理想、平気で人を踏みにじる輩。その他反吐が出るような「普通」等々。
辛うじて持っていた灯りはどこかの曲がり角で捨ててしまった。見通しの悪い悪路に辟易しながら同時に何も見えないことに安堵してい自分がいる。とうに外れた「正解」の道が時折交差して、その度に少し惨めな気持ちを覚える。選んだのも進んでるのも己だと言うのに。
「こんばんは」
暗がりから、細い声がした。マッチの灯りがぼうっと揺れてすぐに消える。少しだけ見えた相手の瞳は美しかった。
「どうして、こんな場所に」
「どうしてでしょうね」
「ここはあまりよくない」
「知ってます」
「それなら」
「帰り道がある?」
──答えられなかった。どこまでも人間らしい押し問答は久しぶりで、少しだけ高揚した。どんな理由であれ、この場所に話のできる生命がいたことはない。透き通る瞳の奥に隠されたモノを知りたくなった。「同じ」なのか「似ている」のか。それとも「違う」のか。気がついたら言葉がこぼれ落ちていた。
「良ければこの先、一緒に歩きませんか」
「稀有な人。でもいいですよ、飽きるまでついてったげる」
灯りも持ってないの、と笑ったソイツはマッチを1箱こちらに差し出してきた。
「束の間の光は何かと便利だから」
ふいに、前方から明るい声が聞こえてきた。白くて明るい道が交わっている。ガードレールの先を通る人々はこちらを見もしない。人々の笑顔が全て仮面に思えて、黒いモノが胸の奥にたまる。
「気持ち悪い」
口に出したつもりはなかった。だけど、聞こえてたはずなのに隣は何も言わなかった。
「……ごめん」
「何が?」
沈黙に耐えかねて──或いは正しいコミュニケーションを思い出そうとして──謝罪をすれば、想定外だとでも言うような声が返ってくる。
「他人は他人ですよ」
それはどこまでも冷たくて固い響きだった。
「もし、帰り道が見つかったら」
しばらくの沈黙の後、先程の話がなかったかのように隣が言う。
「ちゃんと帰ってくださいね」
「嫌だ」
「なんでですか」
「初めて、居心地がいいと思ったから」
「……」
「一緒に歩きたい」
「……」
「だめ?」
馬鹿なんですか、と言う呟きは聞こえなかったことにして誤魔化すようにマッチに火をつける。
薄暗い火のもとに晒された相手の目は、やっぱり綺麗だった。
夢が醒める前に
「」
不条理
大好きだと言ってください
二度と愛してるなんて言わないでください
どうかお昼まで眠っていてください
朝おはようと笑いかけてください
どこにも行かないでください
どこへでも好きな場所へ飛んで行ってください
一人ぼっちにしないでください
飽きたら気軽に使い捨ててください
分別は燃えるゴミです
価値なんて見出さないで
宝物みたいに大切にして
ガラクタの底から見つけてくれてありがとう
お願いだからつまらない物なんて拾わないで
背中合わせでいてください
真正面から向き合ってください
どうか良き理解者でいてください
無遠慮に踏み込んで荒らさないで
いつか
整合性の取れない想いの言語化が上手くできますように
泣かないよ
顔を上げる。マスクを外す。肺を刺すような冷たい空気を躊躇なく吸い込む。一息に吐き出す。肺がひっくり返るくらい吸い込む。吐く。
もう一度顔を上げる。意識的に前を向く。ボケっトに突っ込んだ左手をきつく結ぶ。右手のスマホから流れる曲の音量を上げる。サビ手前。エスカレーターに乗せた足を前に踏み出す。慣性を利用して上る。脳を殴るような重低音。耳の中で情報が飽和する。
息を吸う。思い切り吸って、吐く。マスクをつけ直して無理やり口角を上げる。
泣いてたまるか。