このお題を見た直後に思い出したのは、やはりというか、養母の家に居た猫のことである。
片前脚を切断することになったチピという猫を皆がいじめないように、小屋をこしらえて夜はそこに入れていたのだが。日中は屋根の上が心地よいらしく、猫たちのお気に入りの日向ぼっこスポットであった。
そこから濡れ縁へ飛び降り、コンクリートの地面に降りるというのが猫たちの道であった。
ジャムという猫が、小屋の屋根から濡れ縁に飛び移ろうとした時だ。濡れ縁には空のバケツが置いてあり、ジャムは風邪気味であった。つまり、
くしゃん!
ジャンプ中にくしゃみをしてバケツに突っ込んだのであった。バケツは猫の下半身を生やしたままゆっくり転げ落ちた。ジャムはわたしの視線に気づいて毛づくろいを始めた。何でもありませんよ、と言いたそうに。
【何気ないふり】
読むものは、ハッピーエンドでないと嫌だった。
なのに、自分の創作では、後味の悪いエンドばかりかいていた。
何となく、自分の描くハッピーエンドに、嘘くささを感じてしまうのだ。そうはならないだろう、無理があるよ、と自分でツッコんでしまう。
だから周囲にはハッピーエンド嫌いだと思われていた。逆である。かけないけれどハッピーエンド大好き人間なのである。
いつか嘘くさくないハッピーエンドをかけたらと思いながら、月日は過ぎて、いつの間にか創作から離れていた。
【ハッピーエンド】
養母の家にカピが来たのは、もう子犬とは言えないくらいに育ってしまった後だった。近所の小学生たちが段ボールに入れられた雑種犬を見つけて、箱ごと持ってきたのだ。中型犬でもう成犬くらいの大きさだった。養母も一度は断った。
だが、つぶらで寂しそうな瞳に見つめられ、養母は番犬にすると言って引き取った。カピは家族以外には良く吠えた。番犬にはピッタリだった。おそらくあの時引き取らずにいたら処分されていたと思う。
カピという名は家なき子の小説からとったらしい。三代目のカピなのでカピ三世と呼んで可愛がった。
【見つめられると】
ハートという英単語は心臓のことも意味する。
ここで、わたしが睡眠不足から心臓を病んだ話をしよう。多分お題は違う系統を期待しているんだろうけど。
高校の時、創作と予復習と小テストの勉強で睡眠を削りに削った。三十分だけ寝て、無理に起きて根を詰めてやり切った。そんな生活を一カ月続けたら、ある時心臓が痛くなった。
前傾姿勢で胸を押さえていることしか出来ない。勿論親は「怠け病」だと言って通院許可は降りない。苦しい中、洗濯物を干せないでいると、父に睨みつけられ、悶絶しながら家事を手伝った。土曜日だったため学校は四限まで。しかし三限で周囲に顔が真っ青だと言われ、四限には強制的に保健室送りになった。そのまま医者へ担ぎ込まれて不整脈と心臓に風邪菌が入った旨を告げられたのだ。
【My Heart】
いっぱい欲しいものはあるなあ。
普通のおうちってところに暮らしてみたかった。
傷んでない食事が毎回出てくるといいなあ。
お酒飲んで怒鳴る父がいなくて、やさしい父と、にこにこの母と、楽しそうな兄とで食卓を囲みたいなあ。
ビクビク怯えながら過ごさなくていい子供時代をください。
人付き合いもしたかったよ。
お友達が出来て親に別れさせられたり圧迫面接みたいな嫌がらせも無かったら良かった。
部活も体験してみたかった。
知ってる。全部全部、ないものねだり。
【ないものねだり】