僕の前に道はない。
僕の後ろに道はできる。
有名な、高村光太郎氏の「道程」の一文である。
僕も似たような感覚を抱いていた。
でも僕が来た道を自ら振り返ったとて、過ぎ去った日々の残りかすが、チラチラと輝いて見えるだけで、哀愁に浸れるとかそういう情緒を揺さぶるようなものではなかった。僕の場合は、ね。
過ぎ去った日々にイフはなく、幾つか選んできた選択肢にも正解はない。現在と書いていまと読むこの現実があるだけだ。
残念ながら、僕は詩人にはなれない。
【過ぎ去った日々】
お金は、手放す時にしか価値がない、だっけ。
そんな風刺を聞いた気がする。
僕は、お金より大事なのは信用、信頼だと思う。一度失ったら、二度と挽回できないかも知れないもの。
例えば僕に笑顔を向けてくれる犬猫だって、僕が愛情を注いでいるから、信頼してくれているから、苦手な病院にも渋々行ってくれて、嫌なお薬だって飲んでくれて、また元気になってくれるんだと思う。
人もそうで、どんなに外面が良くても、家の中の振る舞いで、僕は家族をはかってしまう。それに、僕に対する態度に滲み出ると思うんだ。普段の振る舞いって。
【お金より大事なもの】
月の輝く夜は、こっそりと本を読む日だ。
あんな親でも一応、寝ろという。わたしはベッドを抜け出して、大きな窓から煌々とさす月の光を頼りに、本を読み続けた。時に時間を忘れて没頭した。
わたしは夜目がきくようになり、同時に太陽がまぶしくて困るようになった。視力も落ちた。
でも、冴え冴えとした白い光に包まれながら読む本は、いつもより面白く感じられたのだ。
【月夜】
日頃の絆が試される時が来た。
僕はクロが大好きだ。でもクロのほうはちょっと気取り屋で、そんなに懐いてくれていない気がする。
ご飯の時は尻尾をピンと立てて、僕の足の周りをぐるぐるスリスリしてくれるのに。どこか冷めた感じで、心を開いてくれている気がしない。
そんなクロが木の上で、下りられなくなって、にゃーにゃー鳴いていた。悲鳴のような鳴き声。僕は助けなくちゃと虫とり網を抱えて、クロに近づいた。
クロ、ここに飛び込んでも大丈夫だよ。ちゃんと網で助けてあげるから。言ってもクロは木の上でブルブル震えているだけだ。すくんでしまって動けない感じ。
どうしようと困っていたら、兄猫がぴょんと木に飛び乗って、クロを咥えて連れ戻してくれた。
僕とクロとの絆なんてまだまだこんなものだ。
【絆】
いつものご飯。給食の残りものをビニール袋からお皿に移して温めただけのものとか、黄色くガビガビしたごはんとか、においも怪しいおとといのおかずとか。
そんなある日、親が夕飯の支度が出来なかったと言って買ってきたケンタ!
傷んでいない、まだ揚げて日にちもそうは経っていない、安全なおかずと白いごはん。
貪るように食べた思い出だ。
たまにケンタのチキンを白米で食べたくなる。思い出補正とわかっていても、あの味はごはんに合うとわたしは断言する。
【たまには】