「タイニーラブとは、1991年にイスラエルで誕生した赤ちゃん用知育玩具ブランドです」
わたしは今日のお題と検索結果を何度も見返した。
「タイニーラブは、1991年にイスラエルで誕生した赤ちゃん用知育玩具ブランドです」
うん、1991年かあ。
その頃はもう受験戦争只中で、わたしに赤ちゃん玩具は必要なかったな。
【tiny love】
小さい頃のお誕生日は、自分にとって特別だった。
小学校でその日はお誕生日を祝ってもらえた。
家に帰るのが、楽しみだった。
だけど、わたしの誕生日に養母が亡くなった。
誕生日、わたしは学校から帰って心を躍らせていた。
でも、お祝いは、なかった。
お座敷にお坊さんが来て、長く正座をさせられた。
用意したお菓子はお坊さんのためのものだった。
おもてなしをして、お見送りして、おしまい。
わたしの誕生日が祝われることは無くなった。
お坊さんが来なくなっても、わたしの誕生日は養母の墓参りのための日になった。
【おもてなし】
いつまでもいつまでも、心の中にあの日の焚き火が燃えている。
僕が描いたクレヨン画。
空を青く塗りつぶして、明るい太陽を黄色く塗った。
幼稚園の時のお絵描き。
太陽は赤だと大人に言われた。
僕には昼間の太陽は黄色か白に見えていた。
先生にも親にも赤に塗り直すよう言われた。
僕は、おひさまはしろいもん、と言った。
すると親は僕の絵を取り上げて、焚き火にくべた。
丸まって燃えていく僕の絵。
幼い僕は悔しくてわあわあ泣いた。
それからクレヨンを使わなくなった。
あの日の焚き火は今も心の中で勢いよく燃えている。
【消えない焔】
どうして、生まれてきたんだろう。
「生まれて来なければ良かったのに」
どうして、生きているんだろう。
「この金食い虫が」
どうして、いつも父を怒らせるんだろう。
「何がごめんなさいだ、ふざけるな」
どうして、夢を持っちゃいけないんだろう。
「俺のいう通りに進路は決めろ」
どうして、わたしは意見したらいけないのかな。
「うるさい黙れ」
どうして、わたしは愛されない?
「世間体の方が大事に決まっているだろう」
天国の父が、生前放った言葉が、いちいち耳に響く。
永遠の呪縛と、終わりのない問い。
わたしはいないほうがいい?
「早く死んでしまえ」
【終わらない問い】
カラスが落ちていた。
僕はカラスってとっても綺麗な鳥だと思っている。
真っ黒で、声はうるさいけれど、艶やかで賢くて。
でも、ゴミを漁るからか、皆に嫌われている。
いつだか、カラスを飼っている人に会った。
ペットのカラスは良く躾けられていて、憧れだった。
野鳥ではなくペット用に輸入されたカラスらしい。
落ちていたのは野鳥のカラスだ。
車に撥ねられたのか、ぐったりしている。
ハンカチ越しに持ち上げて、連れ帰った。
獣医さんに診せて、治療してあげたいと思った。
飼えなくてもいいから。
畑で野焼きをしていた親は、僕の腕のカラスを見て嫌な顔をした。
まだ息があるのに、捨てなさいと怒る。
可哀想だ、助けたいと言ったら、僕から取り上げた。
そしてカラスを、ハンカチごと火に放り込んだ。
火は半死半生のカラスを覆い尽くした。
燃えて揺れる黒い羽根が目に焼き付く。
それも涙でにじんで、やがて何も見えなくなった。
【揺れる羽根】