紅茶の香りで呼び覚まされる景色がある。
君とよく行った赤レンガ作りの街角のカフェ。
僕はダージリンと半熟のエッグベネディクトを頬張ったんだ。
そしたら君は
「口の周りがヒヨドリの嘴みたいに黄色よ」
って綺麗な歯を見せて笑ってたね。
年下なのに大人ぶっていた君。
愛しさが胸に広がる。
薄霧の秋の穏やかな光。
君と過ごしたひととき。
ティーブレイクに乗って、それらひとつひとつが小さく重なる。
「紅茶の香り」
企業スパイのダーディは、パーティ会場で敵の恋人に近づき、セールストークを始めた。
「我が社と取引すれば、あなたの身の安全は保障しますよ」
しかしよく見ると敵のその恋人は、ダーディの変装した妻だった。
なんと、ダーディの妻もスパイだったのだ。
「愛言葉は」
とダーディが尋ねると、
「離婚覚悟で臨んで」
と妻が答えた。
「愛言葉」
僕が最近楽しいと感じる存在はSNSを通じて知り合ったライブ友だ。
僕の好きなアーティスト『スピノ座』はファンクラブがないから、ライブチケットの当選がとても難しい。
だけどライブ友のおかげで、その入手率がぐんと高くなるんだ。
彼らと情報を交換しながら「スピノ座」のメンバーの事を語り合う時間はなんと楽しいことか。
しかも「スピノ座」の曲を聴きながら語り合えば、心の免疫力が上がっていくような感覚すらある。
風邪をひくこともなくなったし、そんな気持ちの温かさが僕を支えてくれていることを実感しているんだ。
好きなことを共有できるライブ友ってなんだかんだ結構いいなと思っている。
「友達」
昼食のあと秋の透明な青空を見上げ、僕はぽつりと呟く。
「さよなら青春」
思わず自分の言葉にクスッと笑ってしまった。
目を閉じると「青」がすとんと心に落ちた。
その青は、深く鮮やかな宇宙のようだ。
僕は強くなれる自信はないけれど、せめて思慮深い人間になりたいと願った。
どこまでも続く青空を感じることで、少しだけ自分を見つめることができた。
「どこまでも続く青い空」
ペターポのママは、いつもオシャレで素敵だけど、服のアイテムは実は少なめなんだ。
彼女は何点かあるボトムスの中からその日の気分にぴったりの一着を選ぶと、あとはシルエットと素材を考えて全体のコーディネートを作り上げていく。
服はあまり増やしたくない彼女にとって、衣替えは季節の変わり目の整理整頓だけではなく断捨離の時間なのだ。
その過程で、捨てたくなってもすぐには処分しない。
面倒だからメルカリを利用することもない。
着なくなった洋服は、ペターポのドゥドゥぬいぐるみの服にリメイクしている。
彼女は無駄にすることなく大切に手を加えて、自由な発想を楽しんでいる。
「衣替え」