季節と季節がすれ違うように、気づけば愛は静かに薄れていく。
君が春の花を見つめるとき、すでに秋が訪れ足音も遠ざかる。
君が夜明けに窓に立つとき、夕暮れの鐘が悲しく耳に響いていた。
それでも愛した軌跡の影は美しく残されている。
「すれ違い」
気持ちのいい秋晴れの日、
イケメン猫とフェニックス君は、紅葉を見たくて車を走らせた。
ドライブ中に、空高くに見えたのは秋太りしたペガサスさんだ。
ペガサスさんは、山々の木々に赤やオレンジ、黄色の絵の具を一生懸命に届けている。
最近ちょっと太り気味のペガサスさんはダイエット中だけど体がいつもより重くて、今年は絵の具の配達が遅れてしまったらしい。
そこでイケメン猫とフェニックス君も大忙しのペガサスさんのお手伝いをすることにしたんだ。
そして山々が美しい秋色に染まると、イケメン猫たちも嬉しくなって紅葉狩りをたくさん楽しんだのさ。
「秋晴れ」
天界から地上に降りたイケメン猫は忘れられない恋もした。
その記憶はイケメン猫を形成する大切なかけらであり、アイデンティティの一部になっている。
もし、天界に戻ったら思い出はまるごと消えてしまうのだろうか。
そしたら、イケメン猫は今の自分ではなくなってしまうのだろうか。
消えゆく時間について考えを巡らせていると、イケメン猫は無性に切なくなるのだった。
「忘れたくても忘れられない」
かつて若く美しいハスキー犬がいた。
彼はシュッとした端整な顔立ちと鋭い目力で周囲を圧倒していたという。
そんな彼は王女様の特別護衛犬に任命された。
それからは王女様の優しい心に触れるにつれ、次第に彼の鋭い瞳は柔らかく変わっていった。
彼の目には王女様への愛情と忠誠の光が生まれ、王女様を命がけで守り続けた。
そして、その勇敢さが認められて王国から表彰される栄誉を賜った。
時は流れ、彼は特別護衛犬の任を卒業し新たな舞台へと進んだ。
今や彼はワンワン動画サイトのアイドルとして、ハスキー犬界を代表する存在となった。
彼の凛々しい姿とニコニコした表情はギャップ萌えと呼ばれ「ハチュキー」という愛称で多くのファンに愛されている。
「鋭い眼差し」
ジョバンニはボヘンミアンピルスナーを手に、グーフォに向かって言った。
「そうか、君の人生は旅なんだね。君はいつだって高みを目指している。
気負わず、素直なままで高く高く、その高さに向かって進んでほしいと思うよ。
いつか君が僕の手の届かない場所に行ったときには、一生分の涙とともに君を送り出す覚悟はあるんだ」
グーフォは穏やかに答えた。
「でも、君と僕が今ここにいるというのは、切り離せない事実だよ。
だから、今晩のこの今を乾杯しよう」
「高く高く」