むかしむかし、ゾワメムという尊大な魔女がいました。
ゾワメムは本当はとても劣等感が強く嫉妬深い心を持っていました。
ある日のこと、ゾワメムは、山向こうの白い魔法使いが育てている花の方が、ゾワメムの毒草花よりも美しい色をしているのを見つけました。
ゾワメムは悔しくて、白い魔法使いの美しい花に向かって
「ふん、こんなちっぽけで不細工な花なんか役立たずじゃ」
と悪態をつくのでした。
すると、ゾワメムの目には、自分の毒草花の方が立派に映ったので満足しました。
ゾワメムはいつもこんな調子で、比べては他者をけなすことで自分を上げ優越感にひたっていましたとさ。
「優越感、劣等感」
僕の名前はマック。キッチンカーのハンバーガー屋さんをしているよ。お客様から美味しいって評判がいい。
それでさ、今年になって東京から大阪に引っ越すことになったんだよ。
大阪に来たら、なぜかみんなが僕をマクドと呼ぶんだ。
自分の名前が勝手に変えられることに、はじめは戸惑ったよ。
ずっとマックって名前だったんだからさ。
せやけど、だんだんとマクドという名前で大阪のお客さんたちに愛されることがわかって来たんや。
「わいはマクドやで、よろしゅう」と挨拶し商売するようになったんや。
そいでから、わいは大阪に親しみを感じることができて、キッチンカーも大繁盛するようになったねん。
ほんまに、まいどおおきに。
「これまでずっと」
僕はクラスメイトの矢野さんが好き。可愛いしお茶目な性格だ。
ミステリー好きという共通点もあって、同じ本を読んで感想を分かち合うのが楽しい。
最近読んでいる本はアクロスティックで事件を解決する話。
"行の最初の文字をつなげて読む"という暗号の話でとっても面白い。
楽しい会話がこれからも続いたらいいなと思って、勇気を出して告白したんだ。
昼休みに屋上で
「好きです。彼女として付き合ってください」と伝えて、教室に戻ったら矢野さんからこんなLINEが来た。
『午後の授業って眠くて
面倒くさいよね』
これってアクロスティックなのかなとも思ったけど、僕は「そうだね」と普通に返事をした。
その後は、気まずくなることもなく相変わらず矢野さんとは普通の友達だ。
「一件のLINE」
ゆらゆら、目が覚めた。
ああ、お腹が空いたなぁ、
プクプク。
今は2060年。
僕は深海ザメ、年齢は130歳だ。
浅い海では珊瑚がほとんど白化して、周りのお魚や他の生き物がだいぶ減ったようだ。
彼らは僕たちの餌だったんだよね。
そういや、人間の世界はどうなってるかなぁ、プクプク。
気になるけど、最近は海洋環境調査員もめっきり見かけない。
もしかしたら10年ほど前に来たのが最後なのかな。
その時はその人たち、クリスマスなのに日本の気温が48℃って言ってた。
ドームシティがどうとか話していた。
よくわかんないけど、大丈夫なのかなぁ、プクプク。
「目が覚めると」
カレンちゃんへ
私はフリフリ村の牧場で山羊さんたちと毎日を楽しく過ごしてます。
ハイジみたいでしょ。
夜には童話作家のママがいろんなお話をしてくれるのを、いつも楽しみにしてるわ。
でも満月の夜になると、私はじっとしていられなくなるのよ。
吠えて走り出して、山羊さんの首にかぶりつきたくなるの。
この衝動をコントロールするのに、くるくる回ったり、飛んだり、跳ねたりと、一晩中踊りまくってます。
これって、私にとって満月の夜の当たり前の過ごし方なんです。まるでバレエのジゼルのよう。
そしたらママが、この私の姿を見て「ジゼルとハイジ」という変身譚のお話を作ってくれたの。
この素敵なお話が本になったのでカレンちゃんに送りますね。
フィユルより
「私の当たり前」