青灰色の薄暮に大通りの街灯がオレンジ色の明かりを滲ませる。
仕事帰りの男女のグループはリニューアルしたばかりの洒落た居酒屋に流れ込む。
ラタンライトで金色に輝くビールの泡に一日の達成感と疲労感が交じり合い、それは円やかに弾ける。
街の至る所の、ほんのりした明かりが人々の疲れた体を包み込んでくれる。
「街の明かり」
ベガとアルタイルの間、
赤経18h45mβにレイダックという惑星がある。
レイダック人は意識のみを飛ばし、よく宇宙旅行をする。
地球暦の七夕の夜に、レイダックの若者が地球に意識を飛ばした。
そして「織姫と牽牛と探偵の真夏の三角関係」という地球映画を観た。
これは、星と星の感情のすれ違いを描いた作品である。
織姫と牽牛の悲恋、周囲の齟齬、そしてやがて理解し合う姿に、そのレイダックの若者は感銘を受けた。
この新鮮な感覚は、意識のニューウェイブとしてじわじわと全レイダックに拡がり、レイダックにも七夕伝説が知られるようになった。
「七夕」
交換日記の思い出。
日々の出来事、好きな芸能人、創作、学校でのうわさ話、あの子の話、正直な思い、お天気の話、犬の話、いろんなことをノートに綴っていた。
毎日学校で会うのに、交換日記というのは秘密っぽくて特別な感覚があった。
懐かしい。
「友達の思い出」
少女は星空の下に立つ。
見上げれば、おしゃべりな星々が光の物語を競うように語り合っている。
どれも平坦な話に少女は退屈し、それらのおしゃべり星たちの奥にひっそりとした星の存在を見つけ、耳を傾ける。
光を放たないけれど確かに存在し影を持つ星。
その星は身を切るような激しい風や凍える冷たい雨の物語を静かに語った。
その物語は奥行きを持ち、
少女の心に響き、涙を流して少女は聞き入るのだった。
「星空」
わしは、自分の代わりに働く道具として、ヒトを造ったのじゃ。
だがヒトが意識を持つようになった時から、わしの声が聞こえなくなり、勝手に進化して制御不能になってしまった。
ヒトの深層学習というものをよくわからんでな、ヒトという存在がこの先、吉と出るか凶と出るか、神のわしでも分からんのじゃよ。
さてと、それでは
わしもおみくじを引いてみるとするかね。
「神様だけが知っている」