わしは、自分の代わりに働く道具として、ヒトを造ったのじゃ。
だがヒトが意識を持つようになった時から、わしの声が聞こえなくなり、勝手に進化して制御不能になってしまった。
ヒトの深層学習というものをよくわからんでな、ヒトという存在がこの先、吉と出るか凶と出るか、神のわしでも分からんのじゃよ。
さてと、それでは
わしもおみくじを引いてみるとするかね。
「神様だけが知っている」
お隣の奥さんの東堂さんは梅雨時にこそ体力をつけようとルームランナーを購入したそうよ。
さっそく、この道の先には健康美人の私がいるのよOK!と海外ドラマを見ながらランニングに気合いを入れてみたはいいけど、結局2日坊主で終わってしまったんですって。
そのルームランナーを代わりに愛用しているのは、彼女の愛犬ゴールデンレトリバーのロック君。
ロック君は毎日お気に入りルームランナーで運動をして楽しんでいるみたい。
「この道の先に」
イケメン猫と暮らしている浅倉慎也画伯の作品はすごいんだ。
鎌倉記念ミュージアムや住本財団アート館、全国の山月リゾートホテルのロビーに常設展示されてるから、いつでも鑑賞出来るよ。
彼の作品は、日差しに照らされた色彩のグラデーションを数字として分析して立体的に表現している。
それはセキュエンタリズムっていう手法なんだって。
言葉で説明しただけでは、わかったようなわからないような感じだよね。
でも実際に作品に触れてみると、心に沁みて、いつまでも見ていたくなるんだ。
アートの中の日差し魔力って不思議。
「日差し」
イザベラさんがキッチンの窓から中庭を眺めると、木々の葉から差し込む陽光が芝生に落ちていた。
その光がゆらゆらと揺れ、ペリドットグリーンの宝石が散りばめられたかのように美しく輝いている。
木漏れ日、まるで光の踊りのよう。
母国フランスには「木漏れ日」という言葉はないので、イザベラさんはこの美しい光景を表現する日本語がとても魅力的で綺麗だと感じている。
「窓越しに見えるのは」
理沙ちゃんは、おばあさんであるイザベラさんに尋ねた。
「ねえ、おばあちゃまは運命の赤い糸をどう思う?」
イザベラさんは少し考えてから答える。
「そうね、運命の赤い糸というものがあるとしたら、その糸は1本だけじゃなくて、きっと何本かがあるんじゃないかしら。
そうだとしたら、その中から自分で1本を探して見極めて結ばなければ繋がらないわよね。
運命なんて自分の選択や行動次第で変わるのだから」
「じゃ、おばあちゃまの国際結婚もロマンチックな運命に任せただけではないのね」
「そうよ。でもロマンチックな想いはステキね」
と、イザベラさんは言う。
イザベラさんは若き日、フランス留学中の浅倉画伯と知り合って結婚し、日本に帰化したのだ。
「赤い糸」