récit

Open App
6/18/2024, 2:48:30 PM

石は落ちる。鳥も落ちる。
空は落ちる。地も落ちる。
星は落ちる。人も落ちる。
愛は落ちる。夢も落ちる。
優しさは落ちる。包む両手も落ちる。

全てのものが落ちて
受けとめ合う。
そして僕たちをつなぐ。

「落下」

6/18/2024, 1:44:28 AM

薄暗いトンネルを抜けると、そこは光が満ちる広大な空間だった。
最初に目に入るのは、心を打つ旋律を奏でる名演奏家の楽器たち。
周囲には静けさを奏でる秀悦な詩が響き渡り、感慨深い名作の絵画が色彩を添えている。

歩を進めると、過去の精神と現代の洞察が交差する場所が現れる。
タペストリーが語るのは、古代の賢者の言葉や世界中の人々に愛され語り継がれた物語。
心の奥底に触れるような美しい数式や自然の摂理が宿る。

この場所は人々が抱える内なる葛藤や希望を映し出す多義的な存在。
未来に続く道標として人類の知恵や情熱を受け継ぐ聖域なのだ。

「未来」
☆Mライブラリー ニ ムケテ

6/14/2024, 11:43:01 PM

空は彼方で引き上げられ、のし掛かり、そして彷徨う。

それはレジデンスの窓から辿る不確かな返事。

物音は机の小さなコーヒーカップに飲み込まれて消えていく。

通りでは晴雨兼用の傘が曖昧な無表情さで空に向けられていた。


「あいまいな空」

6/13/2024, 11:22:53 PM

陽光に木々の緑が深まり
あじさいが鮮やかなピンクに艶めく。

6月のノルマンディに咲く
華やかなあじさいが元気をくれる。

これらのあじさいが海底に沈んでしまうなら
きっと寂しく美しく青ざめてしまうだろう。

このまま色褪せぬ限り
海底に潜む姿は見えぬまま
心の奥深くに咲き続ける。


「あじさい」

6/12/2024, 5:01:11 AM

真夏日の街で暑さに負けずに挨拶をかわす人々。だけどみんな疲れている。

イケメン猫は夕涼みにストリートでチェロを繰り出し弾き始める。
すると周りにチラホラと人が寄ってくる。
チェロの音色で心に風を感じ人々の疲れも癒やされるんだ。顔つきも穏やかに変わっていくのが伝わってくるね。

でも聴衆の中に不機嫌な存在がいた。それはナマズ君。人間の姿をしているけれどイケメン猫には彼がナマズだと分かる。
この暑さで不満を募らせた人々の怒りを受けて、ナマズ君は本当に怒っていた。

イケメン猫は即興でナマズ讃歌を静かに奏でた。そうするとナマズ君も少し気持ちが落ち着いたようでへの字口で立ち去って行ったんだ。

明日はきっと地震もないだろう。
ナマズ君がいなくなった後イケメン猫はフォーレの「夢のあとに」を奏でたというわけさ。


「街」

Next