Love you
思ってるだけじゃ、伝わらないから。できるだけ言葉にする。
「ねぇ、愛してるよ。」
「うん、オレも!愛してる。」
そんなつもりはないけど、なんか、自分が伝えるたびに応える彼を見ると、確認してるみたいだなと思う。
こんなこと思っちゃうのも無粋か。ただ純粋に、気持ちを伝え合う。それが心地良いことだって、君と出会ってから知ったよ。
これからもっと、君との価値観が交じりあえばいい。
「私も、きみみたいに前向きになれたらいいのにな。」
目に見える範囲のあらゆるものを悲観的に見てしまう自分に、心底うんざりしている。
どうしてもっと素直になれないんだろう。
「そうなの?でもわたしはあなたの慎重さ、素敵だなって思ってるよ。」
そう言うきみは、やわらかな笑顔で私を照らしていた。
この太陽のようなひとに、どれくらい救われたことだろう。そして、そのたびに私は自分の影を濃く、落としていく。
その影さえも飛ばすくらいずっと近くへ、と手を伸ばしたくなるほど、きみに焦がれている。
「君のこと、恋人として見られなくなった。」
なんとなくそんな気はしていた。無意味な時間にでもすがりたくて気付かないふりをしていた。
「わたしはあなたのこと、好きだよ。」
とりあえず、自分の気持ちだけは言ってみる。
「でもわかってる。」
二人が想い合ってない関係なんて続けられないって。「わかってるよ。もう、終わりだね。」
「うん、ありがとう。」
どういう意味のありがとう?別れてくれて?これまでの感謝?わかったところで、もう再び道が重なることはないのだろう。
「お互い、別々の場所で0から始めよう。」
0からのスタート、なんてできない。そんなに簡単に折り合いなんてつけられない。
勝手にあなたの中で良い思い出として締める言葉で飾らないで。
「ねぇ、今あなた、わたしに同情してるでしょ。」
濡れた目をこちらに向ける彼女は、不快感を表すように眉を寄せていた。
「……どういうこと?」
内心、いやな汗が滲んでくるようだった。
彼女を家まで送り届けた私は、目の前で親に心ない言葉をかけられる瞬間に立ち会った。
「自分をかわいそうだと思っていない相手に同情するなんて、傲慢でしょう。」
そのとおりだと思った。
「……つらくないの?」
「つらくないわけじゃないわ。ただ、かわいそうだなんて思ってないし、思われたくもない。ただ、親とわたしがそういう感じってだけ。諦めてる。」
そう言い放つ彼女には少しだけ、嘆きの中に憂いがある気がした。
「そっか。」
同情、は、しないが、少しでも彼女のそのつらさをやわらげられたらと思うことは、許されるだろうか。
「じゃあ、もう少しだけ歩いてから帰ろうか。それからまた、家まで送るよ。」
どこまでも強くあろうとする彼女を、守るなんて言わない。ただ、必要なときに、すぐ近くで。
「……ありがとう。」
彼女は自分の指で、目から溢れかけたものを拭った。