「ねぇ、今あなた、わたしに同情してるでしょ。」
濡れた目をこちらに向ける彼女は、不快感を表すように眉を寄せていた。
「……どういうこと?」
内心、いやな汗が滲んでくるようだった。
彼女を家まで送り届けた私は、目の前で親に心ない言葉をかけられる瞬間に立ち会った。
「自分をかわいそうだと思っていない相手に同情するなんて、傲慢でしょう。」
そのとおりだと思った。
「……つらくないの?」
「つらくないわけじゃないわ。ただ、かわいそうだなんて思ってないし、思われたくもない。ただ、親とわたしがそういう感じってだけ。諦めてる。」
そう言い放つ彼女には少しだけ、嘆きの中に憂いがある気がした。
「そっか。」
同情、は、しないが、少しでも彼女のそのつらさをやわらげられたらと思うことは、許されるだろうか。
「じゃあ、もう少しだけ歩いてから帰ろうか。それからまた、家まで送るよ。」
どこまでも強くあろうとする彼女を、守るなんて言わない。ただ、必要なときに、すぐ近くで。
「……ありがとう。」
彼女は自分の指で、目から溢れかけたものを拭った。
2/20/2023, 6:06:49 PM