ソラシド

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11/4/2023, 5:40:34 AM

#鏡の中の自分


私がにっこり笑えば、キミはいつも笑いかけてくれる。
周りの人たちは、無表情で、疲れていて、眉をひそめて怖い顔をしていた。でも、そんな彼らも私が笑えば、フッと力が抜けたように微笑んでくれた。
それが嬉しくて、私はいつも笑っていた。体調が悪い日も、泣きたいくらい辛いときも、どんなときも笑顔を忘れずに。

「大丈夫だよ」が、私の合言葉。

でも、いつからだろう。

私がにっこり笑っても、キミは笑い返してはくれなくなった。
それどころか、悲しそうな目で私を見つめていた。何か言いたげに唇を震わせて。

おかしいな。笑ってよ。笑ってほしいよ。
グッと口角を上げると、キミはさらに引き攣ったような顔になる。

「ねぇ。もう、そんな風に笑わないで」

涙が頬を伝う。
鏡に映った私は、泣いていた。

「つらいときは、つらいって言っていいんだ」
「かなしいときは、かなしいって言っていいんだ」
「いやなときは、いやだなって言っていいんだ」

そうだった。
キミにそんな顔をさせてたのは、――私だったんだね。

11/2/2023, 6:06:45 AM

#永遠に

水平線に日が落ちていく。焼けるような夕日がギラギラと海に反射すると、たくさんの宝石が散りばめられているかのようで、目を細めた。

「綺麗だな」

隣を見ると、彼が同じく海を見ていた。涼しげな目元をさらに細めて、今にも泣き出しそうだった。
一日の終わりは、いつも胸をギュッと締めつけて切なくさせる。日が沈んでも、明日になればまた日は昇るのに。でも、今日と同じ日は二度と来ない。
今日みたいに、彼と夕日を見ることはないかもしれない。

彼を通りこして、後ろを振り返る。夜空の色がグラデーションを描きながら、私たちを飲み込もうとしていた。

「ずっと、こうしていたいな」

冷たくなった手に、彼の温度が触れた。
ずっと。その言葉を聞くたびに、私は別れを突きつけられたような錯覚に陥る。

『ずっと一緒にいようね』
二人の絆を、愛を込めた愛言葉に含まれた、『ずっと一緒にはいられない』をヒシヒシと感じる。
言葉に意味なんかない、と頭ではわかっていても、無意識的に私の脳裏に過ぎっていく。
この瞬間が、幸せで。今が、幸せで。
幸せだから、いつか必ずやってくる喪失を酷く恐れた。
永遠にはいられない。

少し背の高い彼を見上げた。視線に気づいた彼が、私に微笑みかける。

「そうだね」

私はちゃんと笑えているだろうか。
『幸せ』を感じるたびに訪れる『別れ』が恐くてたまらない。

「ずっと、一緒にいようね」

私が応えると、彼は嬉しそうに笑った。

夜が、もうそこまで来ている。
永遠って、たぶんこんな色だ。

8/14/2023, 2:10:08 PM

#自転車に乗って

風を切ってどこまでも進んでゆく。

補助輪をガラガラ鳴らして、後ろを支えてくれる人の手を借りていた自分も、今はひとりで軽々と乗りこなせる。
走り続けていれば、バランスは保たれるけど、ちょっと疲れたら足を止めて休憩。

安定は自転車に乗るのと似ているとどこかで見聞きしました。

自転車は漕ぎ続けていないと、バランスが崩れて倒れてしまうから、ゆっくりでも漕いでいる方が安定する、と。

ずっと走り続けてることはしんどいよね、疲れるよね、
ひと休みして行こうという考えもある一方でのこの自転車理論。

なるほど、確かにそうかもしれないと思いました。

全ての物事は考え方次第なのだとつくづく思うし、
人によっても解釈が違うのだから、なんとも人間の頭の中は面白い。

今はひとりで乗りこなせるようになった自転車だけど、
倒れることもあります。
倒れるても、起き上がり方を知っているなら、また漕ぎ出せます。

私はたくさん、たくさん、転んできた。倒れてきた。乗ることを放棄もしてきた。

だけど、その度に起き上がってきた。
それはいろんな方法で。
休息だったり、癒しだったり、誰かの手をまた借りたり、別の自転車に乗ったことも。

だから、きっと大丈夫かなって思います。
私も。あなたも。

その舵をきるのは自分次第。

自由な心でどこまでだって、どこへだって行ける。

逆風も追い風も上手に乗りこなせ。

風を切って前へすすめ。