11 善悪
週末までのタスク
・冷蔵庫のヨーグルトを食べる
・残業手当ての精算
・部屋を片付ける
・アミちゃんの誕プレを何にするか考える
・実家に電話
・ハサミとクリップとファブリーズを買う
・たまってる段ボールを潰す
・サブスクの更新を止める
・サボってた筋トレ
・冷凍庫の古い肉を捨てる
・耳鼻科に行く
・上司を殺す
10 流れ星に願いを
わたしは南極になりたい。
いま流れ星を見つけたらきっとそんなお願いをする。
おとうさんとおかあさんがリコンすることになった。どっちもわたしのシンケンがほしくて、優しくしたり、もので釣ったり、相手の悪口を言ったりしてくる。うんざりだった。だからわたしは最近ずっと、本ばかり読んでいる。今日読んだ本には、南極はどこの国も領地にできないことになっていると書いてあった。それって自由で、うらやましいなと思う。
だからわたしは、南極になりたい。南極になりたい。南極になりたい。それにはやく、大人になりたい。
9 ルール
めぐるま台のバス停で小指を拾ったら、小指集めのおばさんに渡すか、小指のポストにいれてください。小指のポストがいっぱいだったら、案内板の根元にそっと置いてください。小指のポストは不要切符入れではありませんので、間違えませんように。間違えるとあなたの小指もなくなってしまいます。
8 今日の心模様
ハートの形が入ってたら、今日のあなたの心模様はハッピー!
という6個いりのアイスをルームメイトとワリカンで買ったら、ハート形どころか一個足りなくて5個しか入ってなかった。
不良品にしてもあんまりだ。ハートじゃなくてもいいからせめて普通のをいれてほしい。しかも奇数になってしまったので、瀬菜ちゃんとわけっこできない。うちの高校の学生寮は私物持ち込みのルールが厳しくて、スペースの限られた冷凍庫に入れるアイスは貴重品なのに。
「いいよ、私はふたつでいいから。愛里が3つ食べなよ」
瀬菜ちゃんはそういってくれた。彼女は自分のベッドを散らかすし、生活音も大きいし、髪もちゃんと乾かさないし、私とはあわない部分が多々ある。だけどこういう、ささやかだけど大事な部分でとても優しい。だから、小さな部屋で二人、ちゃんと暮らせる。
「共同生活ってこういう積み重ねが大事なんだよね」
「どうしたの急に。アイスくらいでおおげさ」
「食べ物を分けるときにはね、隠された底意地や性根が出るんだよ。おばあちゃんが言ってた」
「なんかビミョーに怖いんだけど……」
五個いりのアイスを、消灯までだらだらと喋りながら食べた。心模様がハッピーになるハートのアイスは入ってなかったけど、まずまずの夜だった。
7 たとえ間違いだったとしても
うさぎ「追いし」かの山、って歌、てっきりうさぎが「美味しい」んだと思ってた。そう言ったら「実際においしいよ。学生のころメキシコで食べた」と夫に言われた。私はメキシコのうさぎを食べたことのある人と結婚したのか、と思ったら、なんだか面白くて笑ってしまった。夫は不思議そうな顔をしている。その日のアボカドサラダはなんとなく、メキシコの味がした。