手帳の隅に書かれたメモのようなもの

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6/12/2024, 3:55:58 PM



私には好きなものも嫌いなものもたくさんある。
あれもこれも嫌いであれもこれも好き。
到底数えきれないくらいだけど確かなのは、

そんな私も、やっぱり大切な人には好きなものがたくさんあって欲しいと思ってるということ。










ーーーー幼馴染みが微妙な顔をした。



前からこの話題になると少し困ったような顔をするからなるべく避けるようにしていたけれど、もう四年生なろうというのに彼は入学してから一度も実家に帰らず、長期休みはずっと寮で過ごしている。さすがに一度も帰らないのはそろそろ不味いんじゃないだろうか。そうと思えばどうにもこうにもその話題に触れずにはいられなかった。



「去年は寮に残ってたでしょ?今年は実家に帰るの?」
「…どうしようかな。別に帰ってやりたい用事もないし…」


衝撃だった。
用事がない…!?実家に用事がない!?
実家なんて私にとったらパラダイスに等しいのにどうやら彼にとっては居心地の悪いところのようだ。
多くは語らないが、その語らなさが全てを物語っている。彼の実家では美味しいアップルパイとかキノコたっぷりカルボナーラとか出てこないのだろうか。
いっそ、私の家に引きずっていこうかね………
それもおおいにアリアリのアリだったけど、それはまたの機会にして今回は友の背中を押すことにしよう。


「じゃあ手紙、送るね!」
「え、いや、まだ帰るって決めた訳じゃ……」
「返事かいてくれないの?」
「そ、…そういう訳じゃないけど…」
「ふふ、よかった。じゃあ楽しみにしてるから!」


あれよあれよと彼が言いくるめられてしまうのはだいたいいつもの流れ。優しい幼馴染みは私の願いならいつだって叶えようとしてくれる。それなら私だって君の心の底の願いを叶えてあげたい。多少強引でも力になれるならなんだってする。

好きな場所は、好きなものは、多い方がいいってきまってるんだから。









ーーーーーーーーー

待ち遠しい長期休みはあっという間に訪れ、みんなそれぞれの帰路へと向かう。騒々しい学校や寮に静かな時間の訪れ…にはまだ少し私たちには早い。


「ちゃんと!家帰るんだよ!」
「わかってるよ(笑)気を付けて帰ってね」
「そちらも!忘れ物もしないように!」
「はいはい(笑)ところで切符は持ったのかい?」
「!!!!……………今持った。」
「(笑)(笑)じゃ、またね。休み明けに。」
「うん、休み明けに!」


少し不安げな表情に何か声をかけたかったけど。
詳しく事情をしらない私が何か言える言葉があるはずもなく。


「ぜったいてがみちょうだいねーーーーーー!!!!」
「わかってるよwwww」


いつものように振る舞うことが私の唯一出来ることだった。



(また、この学舎で会うとき君の笑顔が一層輝いていますように)

そう願って私は一足先に寮を後にした。












以下、手紙の内容を一部抜粋。


『今度、私の家に遊びに来てよ!ご馳走用意する~!何食べたい!?何嫌い!?何好き!?!?』


『課題終わらない、、なんならどこが範囲なのかもあやうい………タスケテェ』


『帰ってくるときお土産買ってきてね!みんな呼んでお土産パーティーしよ!』


『遊びたい~~~!ホウキかっ飛ばしてそっち行こうかな。名案だと思うんよ。罰則と退学のスリルも味わえる。けどここでひとつ問題。私、飛行術はE判定なの、、、』






「好き嫌い」HPMA  side. T

6/10/2024, 3:58:01 AM

朝起きたときに外が晴れててぬくぬく二度寝をするのと雨が降っていて心地よい音を聴きながらうとうと二度寝をするのはどっちが気持ちいいんだろうな。

6/3/2024, 11:24:34 AM



6/3/2024, 10:21:03 AM




「嘘つきはよくないよね。」
「そうだね、嘘付かれた方は傷つくよね」
「でもさ。正直者も良くはないと僕は思うんだよ。」
「どうして?」
「正直なことが良いこととは限らないから。例えばデートの終わりに「今日は時間の無駄だった。
一緒にいても楽しくないしもう帰りたい。」って言う正直者どう思う?」
「うわ、ひっどい………」
「でしょ?じゃあこれは?「ここのクッキー美味しかったな。お土産買って帰るときに渡そう。」からのちょっとお手洗い行ってくるねっていう嘘。」
「それは優しいなと思う」
「でしょ?つまりひとえにその言葉だけじゃ良いも悪いも区別が付かないんだよ」
「じゃあ正直者と嘘つき者という言葉はどちらも褒めてもないし貶してもないってことになるね」
「そゆこと。どちらになってもいい、意味は自分で作っていくみたいなね。」





「ふーん………じゃあ私もトイレ行ってお土産買ってもう帰ろっと」
「わぁありがと。僕はタルトがいいなぁ」
「クッキーしか買いませーん」
「とかいって??優しい嘘つきさんめ★」
「いや事実しか述べてないです。」



それでホントにクッキーしか買わないんだぼくの彼女は。






「正直」












6/2/2024, 9:43:23 AM



ほの暗い窓の外ではいつもより緑が濃い草たちが
雨粒を全身で受け止めいた。

雨で思い出すことはひとつだけ。


三人で遊んだ帰り、私と彼女たちで別れて帰ったあの日。

私の乗るバス停前で別れ、二人の後ろ姿を目で追う。一つのビニール傘を二人で分け合いきっと今日の思い出話に花を咲かせているだろう楽しげな雰囲気に私はこのときばかりはビニール傘を呪った。
見たくないものをあの傘は隠してくれない。
一緒に行った店の袋がずしんと重さを増す。あの二人の手で楽しげに揺れる袋と大違いだ。


何て酷い気分なのだろう。つい数分前までは何もかもが楽しくて雨さえもキラキラしていたのに。
あの子が私以外の子と楽しそうにしているだけなのに。 ―――






いつ思い出しても惨めな気持ちになる。

あのときの私の足元に生えていた草と窓の外の草は同じ色をしていて、いまでも私を苦しめる。

ほんの些細なことがいつまでもいつでも心の中にじっとりへばり付いてしまって今でもこの季節が苦手だ。






「梅雨」

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