魔法
保育園を卒園する時、将来 何になりたいかを発表した
『お花屋さん』
『ヒーロー』
『看護師さん』
『お医者さん』
次々と友達が発表して行き、最後 私の順番になった
私は台の上に立ち、大きく深呼吸をした
「私は魔法使いになりたいです」
いろんな人が拍手をしてくれたのが凄く嬉しかった
私は魔法使いの夢を叶えられるようにこれから頑張っていくと改めて思った
あなたは誰
ここ数日、同じ夢を見ている
その夢には必ず男の子が出てくる
毎回 男の子の顔は分からない
「あなたは誰…?」
男の子に聞いてみるが微笑んでる雰囲気はわかるが、名前はわからなかった
それが嫌だとかではなく、嬉しいと思う自分に男の子に好意を抱いてると解った
男の子の正体はわからないけど、彼といるこの時間は特別だ
ーーーーーー
ひそかな想い
「兄ちゃん、兄ちゃん」
「どうした?」
私がててて、とかけ寄ると兄ちゃんは笑顔で迎えてくれる
あー、やっぱり好きだなぁとしみじみ思う
「わっ!」
わしゃわしゃ!っと髪をかき混ぜられた
それが兄ちゃんの照れ隠しだと知っているから余計に嬉しい
密かな想い人の兄ちゃん
いつかこの想いを伝えられたらいいな
手紙の行方
彼に宛てた手紙
それを直接 渡す勇気がなくて、彼の家のポストに投函した
その手紙の行方が気になって仕方がない
受け取ってくれたのか、破り捨てられたのか、燃やされたか…
でも、それを確認する術がない
星に願って
日付を跨ぐ頃、厚着をして外に出る
自販機でホットミルクティーを買って、カイロがわりにしながらぶらぶら歩く
寝れない時の気分転換で始めた夜中の散歩
いつもは通らない道を歩いていると小さな公園があった
なんとなく公園に入り、ベンチに座ると空を見上げる
暗い空に輝く星になんとなく願った
今日は悪夢を見ませんように、と…
遠く… 君の背中
「またな!」
わしゃわしゃと髪を混ぜられ、抗議しようと顔を上げて見えた夏兄の寂しそうな顔に何も言えなくなってしまった
「夏兄!」
笑って欲しくて夏兄のお腹に抱き着くと抱き締め返してくれた
お互いに少しだけ離れ、顔を見合って笑う
「大好きだよ!」
「俺もだよ」
ここで電車の発車ベルが鳴る
夏兄は走って電車に乗るとドア付近に立ち止まり手を振ってくれた
それに手を振り返す
電車が見えなくなるまで手を振り、ホームに背中を向けた途端に涙が零れた
ずーとずーと我慢していた涙が堰を切ったように流れる
「大好きな夏兄、遠く離れても私の気持ちは変わらないよ」
そう伝えればよかったと後悔するけど、伝えたい人はもうこの場に居ない
一頻り泣いてすっきりしたのか私はある決心をした
大好きな夏兄の背中を一生懸命に追いかけよう!と