誰も知らない秘密
「おかーさーん!!」
「ままー!!」
5歳の娘と3歳の息子が手を振って走ってくる
2人を抱きとめると2人とも可愛い笑顔を向けてくれる
「お母さん、大好き!!」
「僕の方がママのこと大好き!!」
「私の方が大好きだもん!!」
「僕!!」
足元で可愛い姉弟喧嘩が始まる
2人をギュッと抱き締めて2人の口を物理的に塞ぐと「私は2人とも大好きだよ」と言う
2人は嬉しそうな笑顔を返してくれて心が暖かくなる
愛しい2人と手を繋いで家に帰る
私には誰にも伝えてない秘密がある
これは墓まで持っていくと決めている
誰も知らない秘密、それは2人と血の繋がりが無い姉弟だと言うこと
静かな夜明け
目が覚め、枕元に置いてあるスマホを手に取った
ナイトモードにしてあるスマホのロック画面を見ると日付が変わってしばらく経ったぐらいだった
また寝ようともう1度 布団を被ったが、30分経っても眠気すら来なかった
寝るのは諦めて厚着をするとキッチンに向かう
「ホットミルクにするか…ノンカフェにするか…」
キッチンに着くまでに何を飲むか悩んでホットミルクにすることに決めた
小鍋に冷蔵庫から出した牛乳を適当に注ぐと火にかけた
かき混ぜながら温まるのを待つ
ある程度 温まったところで火を消して砂糖を少し入れる
マグカップを用意してホットミルクを注ぐ
その場でマグカップに息を吹きかけて冷ますとズズ…と飲むとほぉ…と息を吐く
牛乳本来の甘さに砂糖の甘さが加わって心も身体も温まる
時計が時間を刻む音以外は特に聞こえない静かな夜明け
たまにはこんな時間もいいかもと思ってしまった
heart to heart
弟と食事をしている時、決めていた事を聞くことにした
「私に話したいことあるんじゃない?」
私の急な質問に彼はもぐもぐ動かしていた口が止まった
じーと彼を見つめるとまたもぐもぐと口を動かし、嚥下すると箸と茶碗を置いた
「姉さんに隠し事はできないんだな」
苦笑いする彼に私は「お姉ちゃんだからね」と胸を張るとプッと吹き出され、お互いに笑いあった
姉弟とは血の繋がり以外に心も繋がっているのかな、なんて言い合った
バイバイ
10年ぶりの旧友と1日通して遊んだ帰り
「また遊ぼー!」
「うん!!
気を付けて帰ってね」
「お互いにね!
バイバイ!」
手を振って別れ、改札を通る
帰りながら思い出すのは今日1日の楽しかった記憶と友人の笑顔
「楽しかったなぁ」
思わず呟いてしまったが聞かれて困ることでもないかと思い直した
また明日からの仕事を頑張ろうと思えた
旅の途中
仕事が人1倍 できる友人が心を病んでしまったと聞いた
彼に許可を貰い、会いに行く
「お邪魔します」
昼間なのに遮光カーテンが閉められ、暗い部屋
部屋はいろんな物で散らかり、唯一 座れる場所はベッドの上だった
ふっくらした体型に笑顔が絶えなかった彼は見る影もない程にやつれ、感情が抜け落ちた殻のようだった
ベッドの上に体育座りする彼の隣に腰掛ける
「なぁ、人生って長旅だって言うだろ?
そんな長旅なんだ、途中で休んだっていいだろ」
それだけ言うと彼は静かに泣き始めた
俺はそれに気が付かないフリをしてただ隣に居続けた
「ありがとう…」
泣きはらした目で俺に感謝を伝える彼に「役に立ててよかったよ」と笑うと彼もぎこちなく笑う
彼はこれから回復できるだろう、そう直感が告げる