日陰
いつも日陰にいた私に手を差し伸べてくれたのは君だった
陽の光を背後に手を差し出す君は後光が差してる神様のようだった
「一緒に遊ぼ!」
君に見とれていた私は君の言葉にハッとした
腕をグイッと引っ張られ、立たされた私に君は笑顔を向けて「行くよ!」と言った
今度は私と手を繋いで走る君の笑顔に私も自然と笑顔になった
日陰から日向に連れていってくれた君に私は恋に落ちた
この恋心はゆっくりゆっくり育んでいきたい
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まだ知らない君
産まれた時から一緒にいる幼馴染み
小さい時は一緒にお風呂に入ったし、泥塗れになって一緒に怒られもした
どんな小さなイベントも一緒に祝っていたし、世界で1番 君のことを知っていると思っていた
でも、今 見えている君の顔は見たことない
どんなに一緒の時を過ごしてもまだ知らない君がいると知れた今日を忘れることはできないだろう
わぁ!
「わぁっ!!」と驚かす
驚かされた友人は「ぎゃあ!!」と女性らしからぬ声を上げた
けらけらと笑う私に友人は恥ずかしがりながら「何すんだよ!」と怒る
私たちは隙あらばこんなことをする仲だから、本気で怒っている訳ではないと分かっている
それでも「怖ーい…」とふざける
私と友人のこのおちゃらけは学生の間だけの特権だ
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小さな勇気
白状を持ち上げて立ち止まっている女性を見付け、声をかけるか物凄く迷う
白状を持ち上げているのはヘルプの意思表示だとどこかで見た気がするが、本当に合っているかはわからない
でも、困っているなら助けたいと小さな勇気を振り絞って声をかける
女性はびっくりしたみたいだけど、不安で押し潰されそうだったと泣きながら感謝された
小さな勇気を振り絞って良かったと心から思った
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帽子かぶって
不安障害がある私の必須アイテムの1つ、帽子
外出のお供をお願いして3年程
季節や服装によって生地感が違うものや色など使い分けているが、どの子もくたびれてきた
「流石に買い換え時かなぁ」
と帽子を撫でながら呟く
新しい相棒を見付ける旅を見届けてもらおうと1番のお気に入りを被って出掛ける
今日の外出はなんだか足が軽い
新しい出会いに期待しているのだろうか?
終わらない物語
作られた物語には全て終わりがある
そして終わらない物語はないと解るようになった頃、終わらない物語を作りたいと思った
物語を作るのに必要だと思うこと、必要だと言われていることを全て身に付けられるように努力を重ねた
物語を作る方になった今、終わらない物語ではなく沢山の終わりがある物語をこれからも作っていく
やさしい嘘
「君だけだよ」
そう言ってくれる彼には私 以外にも女がいる
それでも優しい嘘に騙されてあげるのだ
だっていつか本当の意味で私だけになるんだから
瞳をとじて
夕食の片付けをしていると彼に呼ばれた
「目を閉じて」
彼に言われ、素直に目を閉じる
何も見えない状況にドキドキしていると耳に触れられ、何かを付けられた
「もういいよ」
彼の言葉にゆっくりと目を開けるとニコニコ笑っている彼の顔が見えた
はい、と彼に手鏡を渡されて鏡に写る自分の顔を見ると耳がキラッと光った
よくよく見てみると前回のデートで欲しいなと見ていたイヤーカフが付いていた
バッと彼を見ると私の反応を楽しそうに見ていた
「ありがと…」
彼にギュッと抱き着くと「うん」と言って抱き締め返してくれた