あなたのもとへ
今日の仕事を何とか巻きで終わらせ、新幹線に飛び乗った
「今 新幹線に乗ったよ」
彼にそうLINEを入れて、窓から外の景色を眺める
貴方の元へ向かうこの胸の高鳴りに落ち着かない気持ちになる
(早く会いたいな…)
彼の笑顔を想像して口角が上がる
まだ見ぬ景色
旅先ではいろんな出会いがある
人だけではなく料理や景色
私が1番 楽しみにしているのは景色
まだ見ぬ景色に出会うために今日も一人旅に出る
そっと
そっとドアを開け、外に出る
外はまた暗い
「はぁ、さっむ…」
身震いする程の寒さに肩をすぼめる
できるだけ音を出さない様に鍵を閉めてポケットに手を入れて歩く
街灯が等間隔に立っており、それぞれが地面を照らしている
真っ黒な空に点々と輝く星と存在を主張するように輝く満月を見上げながら、そこを歩く
はぁ、と息を吐くと息が白く見える
ポケットに入れた手がブブッと振動した
振動したスマホをポケットから取り出すとロック画面にLINEの通知が表示されていた
通知をタップすると個人のトークルームに移動し、1番下に『今から帰るよ』と表示されている
それに「駅で待ってる」と返事を返し、スマホをポケットに入れる
夜中の散歩が愛しい彼女を迎えに行く事に変わった
星のかけら 未来への鍵 あたたかい
“星のかけらを集めると未来への鍵が手に入る”
抽象的な言い伝えを信じ、1人旅に出た
10年ほど旅をしてわかったことがある
“星のかけら”とは様々な人との出会いと別れであり、“未来への鍵”とは人との繋がりだと
「人とは温かいものなんだな」
最近、そう思うようになった
それに気が付けて俺は良かったと思う
Ring Ring…
ウェディングドレスを身にま纏い、彼と腕を組んで鐘までの道を歩く
道の両脇に家族や友人が並び、歩く私達に花のシャワーを降らす
鐘の前に辿り着くと2人で振り返ると涙を流す両親と笑顔の友人が拍手をしてくれる
彼と向かい合い、誓のキスをするとリンゴーンリンゴーンと鐘が鳴った
「幸せになろうな」
「勿論!」
笑い合う私達を祝福してくれる家族や友人に手を振る
鐘の音を聞く度に今日のことを思い出すだろう…
追い風
自転車を漕ぐと向かい風でせっかくセットした髪が崩れる
そんな粗末な事を気にしていられる程 今は余裕が無い
「遅刻するー!!」
そう叫びたい気持ちを足に込め、べダルを漕ぐ
そんな私を神様は哀れと思ってくれたのか追い風が吹いて、背中を押してくれる
これで遅刻を免れるかもしれないっ!とより足に力を込めてペダルを漕いだ