距離
「はぁ、今日も疲れたー」
手洗いうがいだけ済ませ、ベッドにダイブする
母親が見ていれば「行儀が悪い!」と怒られるだろうが、ここは一人暮らしの部屋で自分以外は誰もいない
「なーにが「先輩は暇ですよね?」だ!
失礼な後輩!」
そう思うよね!と同意を求めたのは推しぬい
もちろん返答が返ってくる事はないがそれでもいいと思っている
むしろ返答があったら怖い…
「はぁ、やっぱり3次元はめんどくさいよ…」
推しぬいを抱き締め、ため息をつく
さて、と気持ちを入れ替えると推しぬいを定位置に戻して部屋着に着替える
人との距離感の取り方がわからない私の心の支えである推し
今日も疲れを癒して貰うために推し活をする
冬のはじまり
『これが食べたくなると冬だなーって思う笑』
Xで肉まんの写真と共にツイートする
タイムラインに自分のツイートが流れた事を確認しながら手の中の肉まんにかぶりつく
はふはふとしながら食べると肉まんからの湯気と自分の息が白く空気に溶ける
行儀は悪いが食べながら歩く
(今日は一段と寒いなぁ)
肉まんが入っていた袋をクシャッと潰し、コートのポケットに突っ込む
寒くなると食べたくなる肉まん
今年もたくさん食べるだろう
どうすればいいの?
突然なイレギュラーに「どうすればいいの!?」とパニックになってしまう私に彼はいつも穏やかに言う
「大丈夫、焦らなくていいんだよ
深呼吸してー」
彼の掛け声に合わせて深呼吸をするとだいぶ落ち着く
「ありがとう」
「どーいたしましてー」
私のお礼に間延びした返事にクスッと笑ってしまう
私達は今までもこれからも助け、助けられて生きて行く
キャンドル
子供達を寝かし付け、ようやく自分時間が訪れる
(今日は寝かし付けに手こずったな…)
んー、と腕を上に上げて伸びをする
背中や腰が鳴ってだいぶ凝っていた事を自覚する
リビングテーブルに癒しセットを入れているケースを持ってくる
椅子に座るとケースから小皿とアロマキャンドル、マッチをテーブルに出して小皿にアロマキャンドルを乗せる
マッチでキャンドルに火を付けるとラベンダーの香りが鼻をくすぐる
「よし!」
気合いを入れると日記帳を取り出し、日記をつける
好きな香りを楽しみながら1日の振り返りができるこの時間が癒しだ
秋風
「だからってありえないわ!!」
バンッとテーブルを叩く音と女性の怒鳴り声に思わず振り返ってしまう
「あーぁ、おしどり夫婦って言われるぐらい仲良かったのに…」
「あの2人にも秋風がたったね…」
隣に座る友人とそんな事を話す
どんなに仲が良くてもなにかのきっかけで亀裂が入る事もあるだろう
その亀裂が修復するのか深くなるのかはお互いの言動によるだろう