手紙の行方
彼に宛てた手紙
それを直接 渡す勇気がなくて、彼の家のポストに投函した
その手紙の行方が気になって仕方がない
受け取ってくれたのか、破り捨てられたのか、燃やされたか…
でも、それを確認する術がない
星に願って
日付を跨ぐ頃、厚着をして外に出る
自販機でホットミルクティーを買って、カイロがわりにしながらぶらぶら歩く
寝れない時の気分転換で始めた夜中の散歩
いつもは通らない道を歩いていると小さな公園があった
なんとなく公園に入り、ベンチに座ると空を見上げる
暗い空に輝く星になんとなく願った
今日は悪夢を見ませんように、と…
遠く… 君の背中
「またな!」
わしゃわしゃと髪を混ぜられ、抗議しようと顔を上げて見えた夏兄の寂しそうな顔に何も言えなくなってしまった
「夏兄!」
笑って欲しくて夏兄のお腹に抱き着くと抱き締め返してくれた
お互いに少しだけ離れ、顔を見合って笑う
「大好きだよ!」
「俺もだよ」
ここで電車の発車ベルが鳴る
夏兄は走って電車に乗るとドア付近に立ち止まり手を振ってくれた
それに手を振り返す
電車が見えなくなるまで手を振り、ホームに背中を向けた途端に涙が零れた
ずーとずーと我慢していた涙が堰を切ったように流れる
「大好きな夏兄、遠く離れても私の気持ちは変わらないよ」
そう伝えればよかったと後悔するけど、伝えたい人はもうこの場に居ない
一頻り泣いてすっきりしたのか私はある決心をした
大好きな夏兄の背中を一生懸命に追いかけよう!と
誰も知らない秘密
「おかーさーん!!」
「ままー!!」
5歳の娘と3歳の息子が手を振って走ってくる
2人を抱きとめると2人とも可愛い笑顔を向けてくれる
「お母さん、大好き!!」
「僕の方がママのこと大好き!!」
「私の方が大好きだもん!!」
「僕!!」
足元で可愛い姉弟喧嘩が始まる
2人をギュッと抱き締めて2人の口を物理的に塞ぐと「私は2人とも大好きだよ」と言う
2人は嬉しそうな笑顔を返してくれて心が暖かくなる
愛しい2人と手を繋いで家に帰る
私には誰にも伝えてない秘密がある
これは墓まで持っていくと決めている
誰も知らない秘密、それは2人と血の繋がりが無い姉弟だと言うこと
静かな夜明け
目が覚め、枕元に置いてあるスマホを手に取った
ナイトモードにしてあるスマホのロック画面を見ると日付が変わってしばらく経ったぐらいだった
また寝ようともう1度 布団を被ったが、30分経っても眠気すら来なかった
寝るのは諦めて厚着をするとキッチンに向かう
「ホットミルクにするか…ノンカフェにするか…」
キッチンに着くまでに何を飲むか悩んでホットミルクにすることに決めた
小鍋に冷蔵庫から出した牛乳を適当に注ぐと火にかけた
かき混ぜながら温まるのを待つ
ある程度 温まったところで火を消して砂糖を少し入れる
マグカップを用意してホットミルクを注ぐ
その場でマグカップに息を吹きかけて冷ますとズズ…と飲むとほぉ…と息を吐く
牛乳本来の甘さに砂糖の甘さが加わって心も身体も温まる
時計が時間を刻む音以外は特に聞こえない静かな夜明け
たまにはこんな時間もいいかもと思ってしまった