heart to heart
弟と食事をしている時、決めていた事を聞くことにした
「私に話したいことあるんじゃない?」
私の急な質問に彼はもぐもぐ動かしていた口が止まった
じーと彼を見つめるとまたもぐもぐと口を動かし、嚥下すると箸と茶碗を置いた
「姉さんに隠し事はできないんだな」
苦笑いする彼に私は「お姉ちゃんだからね」と胸を張るとプッと吹き出され、お互いに笑いあった
姉弟とは血の繋がり以外に心も繋がっているのかな、なんて言い合った
バイバイ
10年ぶりの旧友と1日通して遊んだ帰り
「また遊ぼー!」
「うん!!
気を付けて帰ってね」
「お互いにね!
バイバイ!」
手を振って別れ、改札を通る
帰りながら思い出すのは今日1日の楽しかった記憶と友人の笑顔
「楽しかったなぁ」
思わず呟いてしまったが聞かれて困ることでもないかと思い直した
また明日からの仕事を頑張ろうと思えた
旅の途中
仕事が人1倍 できる友人が心を病んでしまったと聞いた
彼に許可を貰い、会いに行く
「お邪魔します」
昼間なのに遮光カーテンが閉められ、暗い部屋
部屋はいろんな物で散らかり、唯一 座れる場所はベッドの上だった
ふっくらした体型に笑顔が絶えなかった彼は見る影もない程にやつれ、感情が抜け落ちた殻のようだった
ベッドの上に体育座りする彼の隣に腰掛ける
「なぁ、人生って長旅だって言うだろ?
そんな長旅なんだ、途中で休んだっていいだろ」
それだけ言うと彼は静かに泣き始めた
俺はそれに気が付かないフリをしてただ隣に居続けた
「ありがとう…」
泣きはらした目で俺に感謝を伝える彼に「役に立ててよかったよ」と笑うと彼もぎこちなく笑う
彼はこれから回復できるだろう、そう直感が告げる
日陰
いつも日陰にいた私に手を差し伸べてくれたのは君だった
陽の光を背後に手を差し出す君は後光が差してる神様のようだった
「一緒に遊ぼ!」
君に見とれていた私は君の言葉にハッとした
腕をグイッと引っ張られ、立たされた私に君は笑顔を向けて「行くよ!」と言った
今度は私と手を繋いで走る君の笑顔に私も自然と笑顔になった
日陰から日向に連れていってくれた君に私は恋に落ちた
この恋心はゆっくりゆっくり育んでいきたい
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まだ知らない君
産まれた時から一緒にいる幼馴染み
小さい時は一緒にお風呂に入ったし、泥塗れになって一緒に怒られもした
どんな小さなイベントも一緒に祝っていたし、世界で1番 君のことを知っていると思っていた
でも、今 見えている君の顔は見たことない
どんなに一緒の時を過ごしてもまだ知らない君がいると知れた今日を忘れることはできないだろう
わぁ!
「わぁっ!!」と驚かす
驚かされた友人は「ぎゃあ!!」と女性らしからぬ声を上げた
けらけらと笑う私に友人は恥ずかしがりながら「何すんだよ!」と怒る
私たちは隙あらばこんなことをする仲だから、本気で怒っている訳ではないと分かっている
それでも「怖ーい…」とふざける
私と友人のこのおちゃらけは学生の間だけの特権だ
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小さな勇気
白状を持ち上げて立ち止まっている女性を見付け、声をかけるか物凄く迷う
白状を持ち上げているのはヘルプの意思表示だとどこかで見た気がするが、本当に合っているかはわからない
でも、困っているなら助けたいと小さな勇気を振り絞って声をかける
女性はびっくりしたみたいだけど、不安で押し潰されそうだったと泣きながら感謝された
小さな勇気を振り絞って良かったと心から思った
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帽子かぶって
不安障害がある私の必須アイテムの1つ、帽子
外出のお供をお願いして3年程
季節や服装によって生地感が違うものや色など使い分けているが、どの子もくたびれてきた
「流石に買い換え時かなぁ」
と帽子を撫でながら呟く
新しい相棒を見付ける旅を見届けてもらおうと1番のお気に入りを被って出掛ける
今日の外出はなんだか足が軽い
新しい出会いに期待しているのだろうか?