日の出
「はぁ、今日も寒いなぁ」
ダウンのポケットに手を突っ込んで歩く
人も車も通らないこの時間、この場所を歩くのは年に1回だ
行き先は開けた丘
そこが1番 日の出が綺麗に見える…気がする!
「着いたー」
丘の上から見える街の夜景は綺麗だ
これもここに来る楽しみだ
「5時30分かー
ちょうどいいな」
スマホで時間を確認して、思わず頷いてしまう
持ってきた折り畳みのミニ椅子を広げてひざ掛けと保温性の高い水筒に入れたコーヒーをコップに注ぐ
「はぁ、あったか…」
湯気が立つコーヒーを口にしてホッと一息つく
そこからはただひたすら日が出るのを待つ
だんだん辺りが明るくなり、日が顔を出す
「眩し…」
眩しすぎて掌で影を作る
完全に日が昇るまで見届けると広げていた物を片付け、陽の光を背中に浴びながら帰路につく
今年も初日の出が見れて満足だ
新年 今年の抱負
1月1日、元旦の今日
朝起きてから新年の挨拶のLINEに返信してから布団を出る
「おはよー」
「おはよ」
自室から1階のリビングに行くとおせちと雑煮を食べてるお母さんが呑気に挨拶してくれた
それに返すとお母さんの向かいに座っておせちをつつく
テレビの音が聞こえる中、無言で食べ進める母娘
「「ご馳走様でした」」
手を合わせ、使った紙皿等をゴミ箱に捨てる
「今年の抱負は?」
「うーん、平和に過ごす事…かなぁ」
去年を思い出しながら1番最初に思い浮かんだ言葉を言う
「そうね、お母さんも今年は平和に過ごしたいわ…」
お母さんも心から思っているのか声がら疲れが見て取れる
母娘でリビングソファに並んで座り、適当に流しているテレビを流し見る
新年の始まりの日、母娘の願いは叶うのかは2人の言動しだい
1年を振り返る 良いお年を
大晦日、1年 最後の日
夕方にお雑煮と夕飯を作りながらこの1年を振り返る
「うん、推しとリアルに会う機会が多かったな」
1年を振り返った感想はこれだった
初のオフ会に参加したり、オフイベに行ったり、推しに会う為に仕事を頑張った1年だった
今年は頑張ったなー自分、なんて自分を褒めていると着信音が鳴る
『もしもーし!』
「お母さん、元気だね…」
ディスプレイを見て分かってはいたが、電話に出ると明るい母の声が聞こえて思わず思ったままの事が口から出た
『そうかな?
いつもと変わらないわよ』
「…
お母さん、用事は何?」
電話越しなのに首を傾げている母の姿が苦もなく想像できる
その事に対してこれ以上 話が広がることも無いだろうと要件を聞くと『そうそう!』と明るい声が返ってくる
『元旦は帰ってくるの?』
「仕事だから帰らないよ」
『そうなの…
たーくん達が来てて、貴女に会いたいって』
「そうなんだ」
たーくんとは兄の息子だ
“達”という事は兄の子供達3人が来ているのだろう
甥っ子達がいつまで滞在するのかを聞き、別日に帰ると伝えると「良いお年を」とお互いに伝えて通話を終える
「さてと、明日も早いしさっさと作りますかー!」
考え事と通話で途中になっていた料理を再開する
みかん
蜜柑と聞くといろんな事が思い浮かぶと思う
冬、炬燵、酸っぱい、甘い…この辺りがよく浮かぶだろう
でも、私が1番に思い浮かぶのが推しだ
1年半ぐらい前から推している推しの頭には蜜柑が乗っているのだ
「推しに出会う前は炬燵に蜜柑!だったのになぁ」
炬燵に入りながら蜜柑の皮を剥きつつ呟く私
推しに出逢えて良かったと思っている
だって今回みたいな小さな事でもふと思い浮かぶ程 推しが大好きだから
冬休み
今年はクリスマスから冬休みに入った
「ただいまー」
さっさと靴を脱ぎ、手洗いを済ませると自室に向かう
部屋に乱雑に荷物を置くとリビングに向かう
ガチャ…と引き戸を開けるとリビングテーブルの上に伝言が書かれた紙とお金が置いてある
『おかえりなさい
17時には帰宅できると思うのでお留守番、お願いね
お昼代を置いていくので買い物して作ってもいいし、家にあるもので食べてもいいよ お母さんより』
伝言を読み、一緒に置いてあった5000円札を見る
「お昼代には多くない?」
思わず呟いてしまう
そんな冬休みの始まり