仕事する上で何が大事だと思う?
そう聞かれると大抵は「報連相」とか職場で必要なスキルを言うだろう
でも、俺が1番大事なのは心の健康だと思う
俯きながらギターを弾く姿
張ってる感じでは無くボソボソと歌う声
君の身体全てで奏でられる音楽が好き
麦わら帽子
白いワンピースに麦わら帽子を被って家を出る
鍵をかけて振り返ると笑顔で待っている彼がいた
「おまたせ!」
「今 来た所だから」
彼の隣に立つ
彼のさす日傘に入りながら楽しくおしゃべりする
「ねぇ、人生の終点っていつだと思う?」
突拍子もない友の発言に素っ頓狂な声が出る
「いや、ふとさ思ったんだよ…
電車やバスの様に人生にも終点があるとしたらどこなんだろうって…」
酒が回り、変な方向に思考が進んでしまったんだろう
友の顔から手元のグラスに視線を移す
「それは人それぞれなんじゃないか?」
「人それぞれ?」
俺の答えに友は興味深そうに聞き返してくる
「そう
死んだ時が終点だと思う人もいれば、関わりがあった人達の記憶から消えた時が終点だと思う人もいる
だから、人それぞれじゃないかって…」
そこで酒を1口 飲む
「人それぞれか…」
友はそれだけ呟くとまた思考の海に沈んで行く
ブツブツと呟きながらあれこれと思考を巡らせている友を横目にグラスに残った酒を一気に飲み干す
「考え事をしてる場合じゃないぞ」
友の肩を揺らして現実に戻す
「終電に間に合わないぞ!」
俺のこの言葉に友はグラスを仰ぎ、店員に「お会計で!」と言った
蝶よ花よと自分に関わる大人から甘やかされて育った娘
彼女が自分中心な考えになるのは必然だった
「私は今 チョコレートケーキが食べたいの!
今すぐ用意しなさい!」
専属パティシエに命令する娘
雇い主の娘だ
どんなに無茶な命令でも従うしかないだろう
「おい、その言い方はないだろ」
「お父様!」
俺が止めに入ると娘は目を輝かせる
「娘がすまない
持ち場に戻ってくれ」
パティシエに声をかけると頭を下げてから部屋を出て行った
「お父様!?」
俺の言葉に娘は怒りを見せたが無視し、話し始める
「千鶴、甘やかして育てた私達が悪かった
だが、私はお前に言ったよな?
次 同じ様な態度をとるなら容赦はしない、と」
「そ、それは…」
口篭る娘にため息が出た
「使用人だけではない
お前は友人にも同じ様な態度だったそうじゃないか」
「……」
思い当たる節があるのか黙る娘
「お前は可愛い娘だ
だから、変わる猶予を与えた
それなのにお前は…」
そこで言葉を止め、娘の傍まで歩いて行く
「無げにした!!」
ダンッとテーブルを叩くと娘の肩が跳ねた
「お前には失望した
この家から出て行け」
それだけ言うと娘を見ずにその場から立ち去る
後ろから叫ぶ娘の声が聞こえるがそんなのは知った事ではない
世の中そう何度もチャンスは訪れないのだから