由希

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8/5/2024, 2:21:04 AM

「つまんない…」

握っていたシャーペンを机に放り投げ、椅子の背もたれに寄りかかる
テスト勉強を始めて30分
A4プリントの4分の1も終わっていない

「数学なんて今後の人生で使う事はないと思うんだけど…」

ぶつぶつと愚痴を言っていると通話中のスマホから呆れたため息が聞こえた

『勉強を頑張れない奴は今後も何かと理由を付けて頑張れないと思うけど?』

勉強に巻き込んだ友人のド正論に何も言い返せない

「そう言うお前は進んでるのかよ!」

『数学は終わった』

「はぁ!?」

衝撃的事実に思わず声が大きくなる
『うるせぇ』と一喝され、口を閉じる
100問あるのにこの30分で終わるとかバケモンか?なんて思ってしまう

『人をなんだと思ってるんだよ』

怒気を含んだ友人の声に思っていた事が声に出ていたと気が付く

「えーっと…なんだ…その…」

上手い言い訳がすぐに浮かぶはずもなく言い淀む俺

『別にいいけど』

いいんかいっ!と心の中で突っ込む

『つまらない事でも頑張る姿は魅力的だと俺は思うけど、それをするかしないかはお前次第だから俺は知らん』

こいつのこういう所が俺は好きだ

「やりますか!」

放り投げたシャーペンを握り、またテスト勉強に戻る
やる気を見せた俺に友人は『程々にな』と言う

8/3/2024, 3:46:32 PM

姉弟で一線を越える話は漫画でよくあるが、現実でもあるのか
友人にそう問われ、息を呑んだ
俺は義理の姉と一線を越えているから

リビングの扉を開けると対面キッチンにいる瑠奈姉が「おかえりー」と声をかけてくる
それに素っ気なく「ただいま」と返すとさっさと自分の部屋に行く
勉強机にリュックを置くとネクタイを解いてリュックの上に投げるとベッドにダイブする
汗で張り付いたワイシャツも暑苦しいスラックスも今すぐ脱ぎ捨てたいが、そんな事をする余力はない

「琉生」

ノックもなく勝手に入ってくる瑠奈姉
それを注意するのもめんどくさい

「何?」

投げやりに聞くが瑠奈姉は気にしない
ドアを静かに閉めるとベッドまで歩いてくる

「ご飯にする?
お風呂にする?
それとも…」

俺の頭の傍に手を着くとそのまま顔を近付けてくる

「わ・た・し?」

甘く聞いてくる瑠奈姉は女の顔をしている

「確実に食べられるのは俺だと思うけど」

「酷いなー」

言い方は拗ねているがくすくすと楽しそうに笑う瑠奈姉はホントに魅力的だ
俺は軽く頭を上げ、触れるだけのキスをする

「母さんは?」

「寝てるよ」

触れるだけのキスだけでは足りなくて、だんだん舌を絡める深いキスになる
それと同時に身体が熱くなる

(欲しくてたまらない…)

この渇望感と身体のほてりは収まる事を知らず暴れまわる
それを知ってか瑠奈姉は俺を煽ってくる
母さんの目が覚めるまでに姉弟に戻らなければならない
そんな制限さえ今は俺達を焚き付ける材料にしかならない

8/1/2024, 1:21:23 AM

家族といても友達といても埋まらない心の隙間
それに気が付いた時は「きっと気のせい」と思い込む事でやり過ごしていた
でも、思い込めば思い込むほど心の隙間が気になってしまう
だから、私は1人でいたい

7/29/2024, 4:08:12 AM

「お祭り!!」

「はいはい」

はしゃぐ息子に甚平を着せる
自分は動きやすさ重視でワンピースにした

「ママ、まだー?」

玄関でサンダルを履いた息子が待ち切れずにいる

「おまたせ!」

そう言って玄関に駆け足で向かうと「ん!」と息子が手を差しだす
いつ覚えたのか 気が付いたら靴を履く時に手を貸してくれるようになっていた
「ありがとう」とお礼を伝え、息子の手を借りながらサンダルを履く

「「いってきまーす!」」

鍵をかけてから息子と手を繋いでお祭りに向かう

息子が食べたいものと見たいものを話してくれる
それに相槌を打ちながら自分も食べたいものを考える

(今年も食べ尽くすぞー!)

息子に負けず劣らず食いしん坊な私は心の中で固く握った拳を突き上げる

7/27/2024, 2:25:54 AM

大学3年、就活のエントリーシートを書くのに自分の人生を振り返った時 自分には何も無いと思い知らされた

「私はこうしたい」
「私はこう思う」

そういう『自分』というものが存在しない
常に誰かを思って行動し、言葉を紡いでいた

これからの長い人生、本当にこのままでいいのだろうか?
これからは自分に素直に生きてもいいのでは?
1度 浮かんだ疑問は消える事なく次々に浮かんでくる


『誰かの為になるならば』そう思って生きてきたが、これからは自分の為に生きて行こう

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