忘れられない、いつまでも。
好きなアニメの真似して遊んで、
交換日記にパンダのイラスト。
どこへもチャリで駆けつける、ごく普通の女の子。
一般人のまぁるいアンタを
こっちはいつでも晒せるのだから、
悪いことせず、躍進しろよ。我らが地元の大スター。
一年前に当選金支払期限の切れた宝くじが、
捨てようとしたリュックのポケットから出てきた。
当選番号を調べた妻は何も言わず僕をぶん殴った。
初恋の日は初舞台の日でもあった。
客のまばらな3列目中央の席で、
人一倍笑い声を上げていた彼女。
彼女の片襟が大きく捲れ上がっているのを見て、
つい、さりげに自分の襟を正した。
彼女は構う事なく笑っていた。
初舞台なんて悉くスベるべきだ、
なんてスカしていた相方の口元も緩んでいた。
間違えた成功体験だとしても、
最初の客に彼女がいてくれて良かった。
白杖を携えている事に気付いた時は驚いたが、
自信はまったく傷付かなかった。
今日もまた、会場を埋め尽くす笑い声の中から、
彼女の声を探している。
明日世界が終わるなら……
そんな問いに、世の中の人間がどう答えるか。
「いつも通りの1日を過ごしたい」と、返す私。
リポーターは笑顔でその先を促す。
流石に一言じゃダメか。
新宿の日差しは強く、思考力を奪っていく。
「いつも通りジムとサウナに行って、愛犬を散歩させます」
「へぇ、明日が終わるとしてもトレーニングするんですね」
しないよ。そんな奴いたらアホだろ。
なんだか馬鹿馬鹿しくなってきた。
帰ってアニメ流しながらゲームしたい。
「ワンちゃんはなんの犬種なんですか?」
知らないよ。飼ってないし。適当に答えて帰ろう。
「パピルスです」
「……」
何か変なことを言ったか。そんな犬いたよな。
駄目だ頭が働かない。夜2時までTikTok見てたから。
TVクルーは立ち去った。イヤホンを耳に付け直す。
よし。いつも通りの1日に戻ろう。
君と出逢って、嫌いな食べ物がひとつ減った。
骨が多くて過食部位は少ないし、
何より肉が臭くて苦手だった。
食べるリスクとリターンが釣り合っていない。
そう思って敬遠していた。
君は意識を失う寸前、僕に微笑んだね。
僕の抱いていた欲望を全部分かってるみたいに。
もしかして出会った時から、君も僕に食べられることを望んでいたのかい?
君はとても美味しかったよ。
ありがとう、
ホボホネクサニク
タベルダケムダドラゴン。