「同情しないで、ほっといてよ!」
「いや、別に同情してる訳じゃないよ。僕は本気で、君と一緒にいたいんだ」
「……」
彼女は疑い深そうにこちらを見ている。一体いつから、こんなにこじれた性格になってしまったのだろう。僕は仕方なく、彼女に説明した。
「君に出会って、僕は救われたんだ。だから、一緒にいたいって思ってる。ただそれだけだよ」
「……本当に?」
「ああ」
君がこちらを向いて立ち上がり、頬に流れる涙を指で拭った。
綺麗な涙だ。僕は急に、君を抱きしめたくなった。君の魂を癒せたら。一緒に歩いていけたなら。
【同情】
枯葉が舞うこの季節
君が去った
冷たいベッド
かすかな君の髪の残り香
君に似た人とすれ違うと
僕はその香りを 追い求めてしまう
君の肌のぬくもり
今はもう冷たい僕の左側
僕にささいな日々の喜びをくれた
ありがとう
そっと空に呟く
ちくしょう
そんなこと 夢にも思ってないのに
【枯葉】
「今日にさよならするんだ」
君が、手紙を火にくべた
風に乗って、灰が空を舞う
「もう、忘れたいの」
君がつぶやいた
そうだよ 忘れちまえよ
俺が君の思い出を
全部上書きしてやるよ
【今日にさよなら】
「これがお気に入りなのよ」
君が微笑む
俺はロードバイクのことなんか
ちっとも分からない
でも君がそう言うなら
これはいい空気入れなのかもな
【お気に入り】
「俺は、君が好きだよ。誰よりも……会うたびに、あなたのことが好きになった。諦めようとしたこともある。でも、無理だった」
「恵介くん……」
「寂しいときには、あなたのそばにいたい。嬉しいときは、真っ先にあなたに伝えたい。悲しんでいたら、あなたを元気付けたい。この思いは、いっときの感情じゃないんだ」
俺は、まっすぐ結衣を見つめた。
「ありがとう。でも本当に私でいいのかな? 6つも歳上なのに……」
「俺には、あなたじゃなきゃダメなんだ。年なんて関係ないよ」
「……ありがとう」
結衣は、笑いながら涙ぐんでいる。俺もつられて笑顔になった。
【誰よりも】