Sasha

Open App
11/17/2023, 10:18:45 AM

「冬になったら……この種をまこうか。」

明須海は、ボソッと言った。 

「冬に?なんで冬?」

と、照花は答えた。

「だって、春になったらお前はいないだろ?だから、冬に一緒に蒔きたいんだ。」

「よくわかんないけど……今じゃダメなの?」

「ダメだ、秋なんて。」

「?」

「秋、は飽きるんだよ。だから、冬に蒔く。」

「はあ……。」

照花は、やれやれと肩をすくめた。

【冬になったら】

11/8/2023, 12:17:07 PM

「僕らが出会ったことは、意味がないことなんかじゃないよ。そうだろ?」

「でも、たくさんの人が死んだ。私たちは、何も出来なかった……。」

「そうかな。」

真斗は、首にかけたネックレスを、外した。暗闇の中で、わずかにボウッと光っている。

「これが光っているということは、まだ近くに、仲間がいる証拠だ。」

【意味のないこと】

11/7/2023, 2:15:34 PM

「これは、あなたとわたしだから、出来ることなのよ。」

瑠奈は言った。

「そう、なのか?」

「そうよ。今から、この岩をアクティベートしましょう。そうしなければ、この村は、山崩れでなくなってしまう。」

「そんな……。」

【あなたとわたし】

11/6/2023, 10:13:27 AM

「久しぶり。」

「おう、久しぶり……。」

「元気にしてた?自転車には、まだ乗ってたんだね。」

「……。」

「みんな、元気?」

「元気だよ。」

言葉が続かない。窓の外では、春の柔らかい雨が降っている。

「不思議だね。去年の今ごろは、あんなに一緒にいたのに。」

「そうだな。」

去年の今頃は、2人でお金集めに必死だった。そのおかげで、神社は新しくなった。なのに、俺はなんで、こんなに虚しいんだろう?

「もう、こっちには来ないのか?」

「こっちって……。四国?」

「ああ。みんな、寂しがってるよ。」

「みんな、私のことなんて忘れてるよ!」

瑠奈は自嘲ぎみに笑った。


「……忘れるかよ!」

「!?」

「みんな、お前がいるから、信じたんだよ!お前がいるから、ひとつになれたんだ!」

「真斗……。そんなこと、ないよ。みんな、真斗がいたから、ついていったんだと思う。あなたが、一生懸命だったから。」

「ダメなんだ……。」

「え?」

「俺は、お前がいないとダメなんだ!」


【柔らかい雨】

11/6/2023, 7:42:46 AM

そのとき、暗闇の中に一筋の光が差した。

「誰かいるのか!!」

タカオの力強い声が聞こえる。

「ここだ!ここにいるぞ!!」

真斗は、声を振り絞って、力の限り叫んだ。

「おう……う……。」

郁弥も、言葉にならないうめき声を発している。

「郁弥、お前も分かるのか?助けが来たんだ!」

【一筋の光】

Next