君と最後にあった日からはや5年。
パンデミックやら、巣ごもりやら、世界は様相を変え生活様式すらも変わっていった。
今や、人と会うことすらままならないという環境は終焉を迎えたが、体の弱い君と会うことは今も控えている。
本当は君と会って、他愛もない話や昔話に花を咲かせたいところだが…。
体が資本であるから、しょうがない。
昔より交流は確実に少なくなってしまったが、ネットを通じて互いの誕生日を祝うことは続いている。
会うことばかりが交流ではないのだと、しみじみと思う。
繊細な花をご所望とな…さて、何があっただろうか。
花というのはどれも繊細なものばかりだが、あなたが求めているのは植物のそれとは違うようだ。
ならば、六花など如何だろうか。
優美な形状にして、どんな花よりも短命で繊細。その繊細さは折り紙付きで、どんな人物が触れようと瞬く間に儚く散ってしまう。
高潔さと儚さを兼ね備えた自然の麗しさを物語る花。
如何かな?
また私生活が変わりそうな今日この頃。
1年後…さて、どこで何をしているかねぇ…。
子供の頃、魔女に憧れていたことがある。
静かな森に木造の小さな家。
なんでも叶えてくれる薬。
怪しげな光を放つ魔法石に
複雑な魔法陣が描かれた魔導書。
クラシカルな本が並ぶ書架。
飴色が美しい重厚な書き物机。
書き途中の羊皮紙。
人の顔くらい大きな水晶玉。
ブロンズのペン置き。
カラスの羽ペン。
コスモを溶かしたようなインクが入ったインク瓶。
星を眺めて吉凶を占い
月夜の晩はハーブを摘み
占いと薬の販売でひっそりと暮らす──
今でも、心惹かれてしまう魔法の世界。
物語を読むのなら日常的な話が好きだ。
大きな事件も起きず、人も死なない。
穏やかでほっこりする話が好きだ。
昔は冒険ものとかを好んで読んでいたが、キャラクターが死んでしまったり、内輪揉めが起きたりと、身体や精神的にしんどい状況が続く物語は読めなくなってしまった。
まず、そういうヘビーな物語と向き合う体力が昔ほど無い。
精神的にしんどい事は、現実で飽き飽きするほど知ってしまって、もうお腹いっぱいだ。
故に、現実逃避先の物語くらい穏やかであって欲しいのだ。
もし、異世界へ旅するのなら、まったり穏やかな旅で一つお願いしたい。
選ぶ本一つとっても、歳を重ねてしまったのだなとしみじみと思う。