貴方は何気ないふりして、天然な事をしでかす。
だから、気になってしょうがないが始まりだったのに…。
いつからだろう、目が離せなくなったのは。
いつからだろう、貴方が優しい人だと気づいたのは。
いつからだろう、ひたむきな努力家だと気づいたのは。
いつからだろう、ユーモアが好きで話し好きと気づいたのは。
いつからだろう、別の意味で目が離せなくなったのは。
でも、この気持ちは貴方には内緒。
一生打ち明けられなくても構わない。
大切に自分の中で抱きしめるから。
今日も何気ないふりして
私は貴方の隣にいる。
ハッピーエンド。
別名、終わり良ければ全て良し。
物語途中の中弛みや過酷さすらも
この一言で済ませてしまう力がある。
限りなく力業でありながらも、
万人受けしやすい。
稀有な結末。
見つめられると…。
これは、物語より…か。
…。
長文は回避…長文は回避…。
登場人物の女子だけにずっと相手のことを見てという指示を出したらどうなるだろうか。
実験してみよう。
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【屋上組】
彼女がじっとこちらを見てくる。
スッキリとしたフレームの眼鏡の奥にある瞳は、いつものように冷めていて感情が読み辛い。
一見不機嫌そうに見えるが、彼女が不機嫌な時は視界に人を入れないようにするので、不機嫌ではないのだろうが──穴があくのではないかというほど自分の方を見てくる。
──どうした?
無言で彼女と目を合わせる。
いつもならばそれで何かしらの反応があるのに、今日は反応がない。
相変わらずじっと見つめてくる。
──顔に何か付いているのだろうか。
手で顔をペタペタ触ってみる。
特に付いていない。
首をコテンと横にすると、彼女が吹き出した。
【ラボ組】
さっきから助手がこちらを見てくる。
じっと見つめてくる目は、何かを訴えているように見えてしょうがない。
そんなに見つめてくるのなら何か言ってくれればいいのに。そう思うが、彼女は見つめるばかりで何も言ってこない。
自分は、何かしてしまったのだろうか。
今まで彼女から注意されたことは、
徹夜をせずちゃんと睡眠をとること。
今日はしっかり4時間寝たから大丈夫だ。
ちゃんとご飯を食べること。
お昼ご飯も今日は買い込んであるから大丈夫。
時間も確保出来そうだし、こちらも問題はないはずだ。
整理整頓をすること。
…整頓整頓?
ハッとして自分の机を見ると、
乱雑に積まれた書類の束が目に入った。
歪な書類のタワーはいつ崩れてもおかしくない状態になっている。
もしかして助手のあの目は「そろそろ片付けなさい」という目なのだろうか。
ともすると、呆れてものも言えない状態だから無言なのかもしれない。
これは、片付けが苦手とか言っている場合ではない。片付けねば。
書類の束に手をかける。
ここで誤算があった。
書類のタワーは、奇跡的なバランスで保たれていたに過ぎない。そこに外部から刺激を与えれば、後は言うまでもない。
「博士!!」
書類の下敷きになりながら慌てる彼女の声を聞くだなんて、大誤算だ。
文章作りは、
自分自身と向き合うことだと思っている。
作りたいものを考え、言葉を選び、文章として出力する。その一連の作業は、取捨選択の連続であり、選択の数だけ自分と向き合うことになる。
思考寄りの私は、何事も計算式で考えることが多い。
〇〇=△△ならば、□□といった具合だ。
この考え方は、物事の捉え方や思考の整理に適している。
定義を仮定することにより、そのものを探ろうとする式だからだ。
その為、雑談的な文の時によく利用している。
一方、物語作りは思考よりもっと大切なものが必要になる。
それは感覚的なもので、心の琴線とも言われているものだ。
例えば、楽しいものを見たとして、
どのように、楽しいのか。
どれ位、楽しいと感じているのか。
何故、楽しいのか。
その事柄と似ている物事は何か。
上記は物語に深みを持たせる要素ともいうべきもの達だが、これらは経験則から得た感覚の言語化が必要となる。
正直、私はコレが得意ではない。
独自の感覚を言語化する事は、勇気がいる。
また、学生時代よりも感覚が鈍くなっているので、何故そうなるのか、自分自身のことなのにわからない。
思考的な例えは出てくるのに、自分の心が絡むと急に言葉が出てこなくなってしまう。
世間一般的な事を理解しようとする思考はあれども
多分、心はなおざりにしがちなのだろう。
物語を作ることは虚構を作ることだが、感じるものまで虚構にしたくないと、個人的には思っている。
血の通った文を書きたいならば、自分の心と向き合う必要がある。
感じた事をジャッジするのではなく、感じたありのままを受け入れる──子供のような素直さが必要なのだろう。
ともすると、捻くれがちな思考を休めて、先ずは自分の心をそのまま受け入れることから始める必要がありそうだ。
ないものねだり──そこにないものを(無理いって)
欲しがること
欲望の形の一つ、か…。
コレを上手く活かすなら
【ないからこそ作る】
無から有を生み出そうと行動するならば、その願いは叶うかもしれない。
望み通りのものが出来なくとも、トライアンドエラーの最中に新しいものが生まれるかもしれない。
自己のスキルが向上するかもしれない。
こう考えると【やってみよう】と行動する者にこの世界は何かしらを返してくれるのだろうか。
では逆に、欲望に飲まれたとしたら…。
【ないから奪う】
【ないから妬む】
【ないのは、自分以外のせい】
無から有を生み出そうと行動もせず、行動するものから奪い、行動するものに嫉妬し、自分を顧みること無く他を責める。
何も成長せず、ただ悲しみを生むだけでしかないように見えるのは私だけだろうか。
どちらも同じ欲望で結果がこうも違うならば、他者から馬鹿にされたとしても【やってみよう】に舵を取った方が良いのかもしれない。
どんなものも多面性を持つ。
そちらも努々忘れないようにしておこう。