『春爛漫』
新しい環境に入り
新しい仕組みに入り
新しい関係に入り
新しい苦労を知り
新しい壁を知り
新しい現実を知り
見渡せばたくさんの花が咲き誇り
暖かく煌めいたその春風は
私たちに見せるように急かすように
私達も蕾をつける準備をし
開花に向かって春風も冷たい雨も吸い込む
さぁ
自分の花はどんな花なのだろう
『誰よりも、ずっと』
私の母
それは、この田舎の街の緑の全てであり
それは、この空の続くまで全てであり
それは、この踏みしめる地面が自分を支える限り
母である
夜に寝ると
これらの母に包まれて
羊水の中でふわふわと浮きながら寝ているみたい
自転車で走り出せば
風は共に走ってくれる
口笛を吹けば
虫が私の周りを踊るように飛び回るのだ
幾度となくコケて
幾度となく空を見上げて
幾度となく下を見て歩いた
その度に母はいたのだ
私に手を差し伸べていた
誰よりもずっと
私も救われている
誰もがきっと
『これからも、ずっと』
日々に浮遊感を感じて
何処か掴まれるところを探して
手を伸ばしても弾かれて
やがて身を任せた
私は銀河の川をゆるやかに下り
いつしかすみっこのほうに定住していた
自分の意思ではないしそこに名前はないが
とても住み心地が良くて
今日もそこで大きく息を吸って
ゆっくりと吐いた
『沈む夕日』
空は表情を変えて
黒い雲達は秩序的に流れゆく
草花はやさぐれて風に吹かれて
そんなからっ風は乾燥した手のヒビに突き刺さる
オレンジと黒で染まった街は
どんどん黒味を帯びて
沈む夕日を見ていたら
私は明日に期待するのをやめようと思う
明日の青に期待をよせて
鏡の自分を笑顔にさせて
吐こうとした息を強く飲み込んだ
『君の目を見つめると』
目を擦りながらお手洗いに向かう
洗って濡れた手をパジャマで拭いて
何かを求めてキッチンへ
その途中の光が入る窓には霧吹きがあって
それを流れるように取って3回吹きかけた
少し蕾をつけた葉っぱが艶やかに新緑色を輝かせる
そうして君は送り出してくれるのだ
家に帰れば真っ暗な部屋で
月明かりだけが差し込んでいる
シースルーのカーテンは揺れて
君の影は大きく揺らいで
電気をつければいつもの形におさまった
冷めた飯を電子レンジに入れて
待っている間に君の方に向かっていって
君をよく見ていたら新しい芽吹きを発見した
私の更地の心にも少し緑が生えた気がした