「夏の気配」
急に目が覚めた
時計を見ると2時間早い
二度寝でもしようか、 無理だろう
起きる
3時の廊下は冷たい
昨日は土砂降りだったのに
雨音1つ聞こえない、車の音でさえ
歩く
トイレに着く
空いている小窓から香る
春じゃないし、梅雨じゃない
少し爽やかな、でも暑い夏の風が
吹く
リビングに入る
意味もなくスマホをつける
ページに梅雨の終わりが告げられる
暗い部屋で、唯一の明るい光をこの手で
消す
作業をする
いつもの時間になる
一息いれるコーヒーを淹れる
ふと、気がつくと、うるさくセミが
鳴いていた
「まだ見ぬ世界へ!」
どのくらい歩いたのかな
きっと人が一生を終えるのと同じくらい
先の方に一粒のごまのようなものがある
近づいてみようかな
目の前には小さな、でも存在感の大きな扉があった
ふと、横に目をやると、
私より頭2つ分、背の違う子供が立っていた
女の子なのか男の子なのかわからなかった
「こんにちは」
子供の方から声をかけられた
その声は鈴のようだがどこか響く
「おとなのひと、めずらしい」
私は大人ではない
「おにいちゃん?おねえちゃん?」
どうやら、向こうも判別できないようだ
「いいや、おとなもここにはいるの?」
私は迷った、この道で扉など一度も見ていない
まず、ここは道なのだろうか
「ここのとびらあけてあげる」
この扉を開けられるのは、この子供だけのようだ
「いってらっしゃい」
扉の外は光で見えなかった
「あなたのみらいにひかりがありますように」
私は心を決めまだ見ぬ世界へ飛び出した
「最後の声」
「 」
これがあなたの最後の言葉だった。
街の動く時間、公園で君は私と出会った
年齢なんてわからなかった、あなたも私も私服だったから
「 」
これはあなたの最初の声
なんて言ったかはわからない
だって耳が聞こえないから
あなたは私になにを言ったの?
きっと一生わからない
けれど、わかった気がする
あなたに届いたかな
私の出した最後の声が
「君と一生を共にしたい」
これが僕の最後の告白だった。
5時のチャイムの鳴り響く公園に、君は座っていた
一目惚れからだった、君とずっといたいと思った
「あなたに一目惚れしました」
これは僕の最初の告白
君はどう思ったんだろう
君が僕の目を見る
君の顔には疑問が浮かぶ
なんでそんな顔をしてるの?
きっと僕にはわからない
けれど、気づけたんだ
かすかに声が聞こえたんだ
君の出した最初の声が
「ありがとう」