お母さんはしょうたの10才の誕生日に
「鍵」与えます。
銀色に光ったゴツゴツした細長い「鍵」です。
お母さん、これなあに
これはね 『鍵』だよ
しょうたが何かを選んで進む時に
未来への
大切な『鍵』だよ。
どこを開けるの?
どこも開けないよ。
そうだね
開けるとしたらしょうたの胸の中さ
その時まで机の中に
しまっておきなさい。
その時っていつだろう
しょうたは机の中にしまいながら
考えました。
スーパーでチョコかアイスを
選ぶ時かな
休み時間にサッカーか
ドッチボールを選ぶ時かな
考えた後、しょうたは「鍵」を
再び取り出します。
何だか魔法の宝物を触るようで
秘密めいてドキドキしました。
お母さんの言葉を思い出しながら
「鍵」を胸に当てます。
目をつぶっていると
何だかホッとした気持ちになり、
お守りのようだと思いました。
しょうたは大事に大事に
机の中にしまいました。
…続く
#440
寒い冬の夜に
星のかけらが降ることがあります。
何千年何万年と
宇宙をさ迷い回り
やっとこの星に
呼びかけられてやってきます。
ようこそわが星へ
星のかけらは
認められたくて
愛されたくて
存在を知ってもらいたくて
やってきます。
大丈夫 あなたが来ることは
みんなが待ってたよ。安心して。
キラキラ光り静かに舞い降りる
星のかけらは
子供が拾い
大人がつかみ取り
懐へと収まっていく。
幸せになりますように。
私も幸せになりますように。
星のかけらは命となって
この星で輝き続けます。
#427
母と私は電話の前にいる。
時間通りに
リーン リーン
受話器を取った。
交換手の声の後に
姉の声。
40数年前にアメリカに
留学していた姉の声。
何月何日の何時頃に電話すると
手紙に書いてあった。
封筒の表にはエアメールのスタンプ。
元気?
風邪引いてない?
矢継ぎ早しの質問に
衛星のズレかワンテンポ遅れて
答えが帰ってくる。
元気だよ 大丈夫。
姉の声はとても遠く
受話器を耳に押しつけないと
聞き取れない。
一つ一つの声を元に顔の表情や体調を
汲み取ろうとする母。
姉が遠い遠い国にいることを
実感する。
遠くてもちゃんと電話で繋がる
国際電話ってすごい
小学生だった私はとても感動したことを覚えている。
時は令和。
娘が留学。
今ではスマホひとつで簡単に繋がる。
声も鮮明で
表情だって体調だってすぐわかる。
スマホで電話する度に
姉と話した国際電話を思い出す。
そして心配性だった母のことが
今になって理解できる。
#415
君と一緒に遊ぶ。
君と一緒に絵本もよむ
君と一緒にお昼寝する。
長い人生のなかで
君と一緒にいる時間は
ほんの少し。
私と一緒にいた時間も
君は忘れていくだろうが
私は忘れない。
君の泣き顔 笑い顔。
しっかり育ってほしいから
保育者として私はあなたに
生きる力と喜びを与える。
#408
私は寝る前に良かったことを
3つ探して記録している。
夕飯を家族が誉めてくれた。
バスに乗り遅れたが遅刻せずにすんだ
キーウィが2個で100円だった。
些細なことだが日常は
幸せに溢れている。
#396