落ちていく 私の筋肉
落ちていく 私の瞼
落ちていく 私の頬
みんな重力に逆らわず
素直に落ちていく。
私の身体よ
そこは反抗してほしい。
見えない糸で吊るそうか。
見えない針で刺激を与えようか。
落ちていく全てを
受け止め
食い止め
押し上げる。
この年齢のあるある。
どうすればいいの?
若い時はそう考える状況に
よくぶち当たった。
仕事。人間関係。子育て。
考えた末、選んだ方法が
正解だったとは断言できない。
そして今の自分ならわかるかと
言われても今もわからない。
占いにも行った。
人生の先輩にも聞いた。
公共機関も利用した。
悩んだ先に今の私がいる。
あの頃…若かったわね…
と、笑って話すには
もう少し
歳を重ねる必要があるかな。
幼かった頃
緑の小箱に入ったブローチが
私の宝物だった。
淡いピンク色のブローチ。
バブーシュカを被る女の子の絵柄が可愛かった。
周りには銀色に光るものが縁取られ、自分はそれがダイヤモンドだと思っていた。
絵の部分は少し浮き出てて、
触ると冷たいのに何故か指にフィットして気持ち良く、
反対に周りのダイヤモンドはゴツゴツして、まるで女の子を守るイバラのようだった。
誰からもらったのか。
きっと母親からだろう。
箱から取り出しては眺め、
またしまう。
その眺めている瞬間が
たまらなく好きだった。
絵の中の女の子は私で、
昭和チックな妄想に時間を膨らませていた。
今はもうない。
どこにいったか。
私の幼心と一緒に
捨ててしまったのだろう。
たくさんの思い出
これだけ長く生きてきたら
たくさんの思い出
そりゃあいっぱいありますよ。
映画インサイドヘッドに出てる
「思い出ボール」を思い出す。
始めての体験や記憶がボールとなって脳の中で収納されるやつ。
もちろん私の脳には思い出ボールが
数億個入っているだろう。
ちゃんと整理整頓されているかしら。
「そう…あれなんだっけ…
あれよあれ」
時々モノが思い出せなくなっている。
私の思い出ボールはきっと床に
ゴロゴロ転がってるかもしれない。
片付けなくちゃ。
そしたら記憶力良くなるかしら。
ここ南国にも秋が来ている。
窓を開けて寝ていると、季節の気配が直に感じられる。
このところ明け方はかなり涼しくなっている。
肩が寒い。
半ズボンから出た足が寒い。
蹴って身体から離れたタオルケットを手探りでつかみ、体に巻き付ける。この時間だけは毛布が肌恋しくなる。
記録的な暑さが続いた夏。乗りきった猛暑が一段落し涼しくなると、体がホッとして力抜けてしまう。
毛布を身体に巻き付けた
この瞬間を味わう。
また、冬になったら
寒さで力が入るのだから。
北風の強い夜が私は寂しい。