かきくけ子

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幼かった頃
緑の小箱に入ったブローチが
私の宝物だった。

淡いピンク色のブローチ。
バブーシュカを被る女の子の絵柄が可愛かった。
周りには銀色に光るものが縁取られ、自分はそれがダイヤモンドだと思っていた。

絵の部分は少し浮き出てて、
触ると冷たいのに何故か指にフィットして気持ち良く、
反対に周りはゴツゴツして、まるで女の子を守るイバラのようだった。

誰からもらったのか。
きっと母親からだろう。
箱から取り出しては眺め、
またしまう。
その眺めている瞬間が
たまらなく好きだった。
絵の中の女の子は私で、
昭和チックな妄想に時間を膨らませていた。

今はもうない。
捨てたのか。
私の幼心もどこかに捨ててしまったのかな。

11/21/2024, 7:22:28 AM